大樹の物語 1-3
グラウンドからカキンッ!という金属音が聞こえ、窓側に座っていた大樹は晴天の青空を見上げていた。あれから四年の月日が経ち僕は私立の前原中学校に入学した。
「よっ、大樹、何外見てんだよっ」
そこには親友の中原貴史が微笑みながら立っていた。
「いい天気だなって思っただけだよ」
と微笑み返しながら言った。
貴史とは中学の入学式からの仲で、部活も剣道部で一緒だ。とにかく天真爛漫な性格で誰とでも仲良しだった。
「早く部活行こうぜ」
「そうだな、もうちょっと待ってて、このノートだけ書いちゃうから」
「おっけ!」
そんなたわいもない会話をして僕はそそくさとノートを書いた。
「あ〜、部活疲れた〜」
「それな〜」
貴史とは帰り道も一緒でいつも部活終わりに一緒に帰ることが日課になっていた。
「駄菓子屋寄って、アイスクリーム買って帰ろうぜ?」
「いいよ!」
僕たちの帰り道には一軒、周りの新設された建物とは対極的なアンティークな雰囲気漂う古民家な駄菓子屋がぽつりとある。
「おばちゃん、こんばんは!」
元気な声で貴史は喋り、
「こんばんわぁ」
方言で少し訛ってる、猫背で松葉杖をついた駄菓子屋のおばちゃんがこちらに向かってゆっくりとした足取りで歩いてくる。
「俺、このストロベリーのアイスにする、大樹は?」
「俺は…、チョコにする」
二人共にアイスを手に持ち、おばちゃんに勘定を頼んだ。
「二つで二百円ね」
「やっべぇ…、財布家に忘れてきちゃった、大樹悪いけど俺の分立て替えといて、お願いします!」
じゃあ来る前に財布があるか確認しろよと心の底から思ったが口に出すのを止めた。
「しょうがないなぁ、じゃあ千円で」
「よっじ!、あざすっ!」
なんて陽気な奴だと思った。
「千円ね。八百円のお釣りだよ。」
「ありがとうございます」
「気をつけて帰りなさいよ」
「わかりました〜」
僕たちは声を合わせて言い、アイスの袋をゴミ箱に捨て、一口ほおばり帰り道に戻った。
この日々が永遠に続くと思っていた、あの日までは。