5 完全勝利タクティクス初級編3
あの日から4日経ったお昼過ぎ。
事件は起きたのです。
オフィスの戸を力任せに激しく開く音で、皆の注目はその一点に集中しました。視線の先には荻原部長。真っ赤な顔で私の席までズカズカやってくると、デスクの上に私の書類の束を投げつけてきました。
それは私の作った資料です。
「おい、足立! 何だ、キサマが作ったこの提案書! キサマは会社を潰す気か!」
その声で社長は席から立ちあがり荻原部長の横に並ぶと、不機嫌そうな顔つきで腕組みをしたまま私の方を見下ろしています。
「何をそんなに怒っているんですか?」
「はあ? キサマ。こんないい加減なゴミを作っておいて、よくもまぁ、そんな減らず口が叩けるなぁ。キサマのおつむの中には、ちゃんと脳みそがあるのか? もうすでに破棄したんだろ? えぇ? 何とか言ってみろよ!」
おおよその見当がつきました。
方向性もよく分からないまま部長の書いた落書きをそのまま企画書に起こしたのですから、当然の結果だと思います。だから再三、見直すように告げたのです。
面倒だから見直すことなく、私の作成した企画書をそのままクライアントに持っていったのでしょう。
濡れ衣もいいところです。
まぁこうなることは分かっていました。
あまりのバカさ加減に、正直嫌気がさしてきます。
いつもなら、ここでペコペコと謝っていたと思います。
その後、トイレで一人泣いていました。
ですが、私には修行で身に付けた奥義があるのです。
これを使えば、あなた達を粉砕できます。
ですが、まだです。
まだ牙を向けてはいけません。
何故なら、私の設定したXディはもう少し先。そう、私が上級編を会得したその日、あなた達に死より恐ろしい完全たる敗北を味わっていただきます。
ですから、今回あなた達とちょっと遊んであげるだけ。
私は顔では怯え、心中での葛藤を極限に抑え、静かに口を開きました。