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2 Xデー

 私の心情を言い当たられ、正直ショックでした。

 ですが、今日の出来事は本当に悔しかったのです。

 いえ、今日だけではありません。

 今まで、私はがむしゃらに頑張ってきました。

 なのに、酷い言葉を浴びせられ、社長までもが私を軽視した。

 だから一人で飲みに来たのに、居酒屋に入るのさえ怖かった。

 スーツ姿の男性を見るだけで、職場を思い出し、全身が震え出したのです。

 それが余計に惨めでなりません。


 だから伊藤さんに頷くしかありませんでした。



「私はどうしたら……?」

「足立さまはどうなりたいのですか?」


「分かっているでしょ! あいつらをぎゃふんと言わせたいんです!」

「はい、その事項は分かっております。わたくしが質問した点は、具体的な結末。ぎゃふんと言わせるにも、度合いがあると思います。具体的にどの程度ぎゃふんと言わせたいのですか?」


「そんなの……えーと……。と、とにかく、あいつらを圧倒的にめちゃくちゃにこれでもかってくらい思い知らせてやりたいわ!」


「かしこまりました。足立さまが望まれている結末、それは完全勝利ですね?」

「そ、それよ! 私が言いたかったのはその言葉よ! 私は完全勝利するの!」


 伊藤さんは服の裏から一枚の紙を取り出すと、机に置きました。

 住所が書かれてあります。


「まず明日の就業後、急いでこの住所の場所に行ってください」

「ここはどこなんですか?」


「初級の訓練所……とでも言っておきましょうか」

「く、訓練?」


「はい。これより足立様は、華麗に圧倒的に完膚なきまでにスタイリッシュに勝ち抜くために、明日から修行をして頂きます」


「え? ええ?」


「足立さま。今のままで勝てるとお思いでしょうか? まぁそれなりに小手先のテクニックを駆使すれば、勝てるには勝てますが、圧倒的な勝利とは言い難いでしょう」



 確かにそうね。

 私には色々足りていない。



「最後にひとつだけ確認させてください。あなたは圧倒的に勝利をつかむため、、その過程において泥臭いことをできますか?」


「もちろんよ! 犯罪以外だったら何だってやってやるわ!」


「そうですか。では、これを……」


 それはシールで封がされた白いシャープな封筒でした。

 差し出されたので、反射的にそれを受け取りました。


「これは何ですか?」

「これにはXディが記されております」


「何のXディですか?」

「言わずと知れた、アレですよ。足立様が望むことが起きる日……とでも言いましょうか。あなたの完全勝利が確約する日です。この日、あなたが望むままの結果が訪れます。すべてはあなた次第ですが」



 一瞬、伊藤さんの眼鏡がシャープに輝いたように思えました。

 彼の視線に、思わず強く息を飲み込んでしまいました。

 胸がむせ、咳き込んでしまいました。



「このタイミングで声のトーンを落としインパクトの強い言葉を発すると、足立様が咳き込むことは分かっておりました。ですが、念を押したかったので敢えて心象に残る手法を取らせていただきましたことを謝罪します。どうかお許しください」



 私の息が落ち着くのを待って、伊藤さんはゆっくりと話し始めました。



「もう一度、復唱します。絶対に封を破らず大切に保管してください。いいですね、絶対に破ってはいけません。破ればあなたから、勝利という言葉は逃げていきます」

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