ノースオブエデン
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ミズガルズ王国の王都アースのスラム街にある酒場、ノースオブエデンは深夜に訪れた招かざる客を、ワインレッドのコートを羽織った銀髪の剣士が片付けた後、表の顔である酒場とは違い、裏の顔の客を迎えていた。
「それで? 何でアンタ等がアタシのことや、アルビダ義母さんのことを知ってるのか、お前等はいったい何者なのか、きっちり説明してもらおうか?」
シャロンがチェンバロを奏でている店内では、散々カインにからかわれ、疲れきったマリアがカウンターテーブルのスツールに座り、低い声で問いただしていた。
「その前に、あの義眼の司祭の死体を処理した方がよいのではありませんか? アンクー共は塵にかえりましたが、あの男の死体は消えないので」
キースがカウンターで再び酒を楽しんでいるカインに尋ねる。
それを聞き、カインは気怠げにスツールから立ち上がると、義眼を付けた司祭の男の方へと酒を片手に向かう。
「まぁ、待てよ。このオッサンの義眼だがな」
義眼を付けた司祭の男の前でカインは足を止めると、その場に屈んだ。
そして義眼を付けた司祭の男の赤い魔法陣が描かれた片目に指を突っ込むと、問題の義眼を取り出した。
「はん。やっぱりな……この魔法陣が描かれた義眼は魔具だ。これを付けた奴の魔力が上がる効果があるんだが……少し待てよ、今術式を解いてる所だから……やっぱり隠れてたか、これは、おそらく義眼の対になっている何らかの魔具があるはずだ。この義眼を通してこっちを見れる様にしてあるなぁ」
カインは指で持った義眼を自分の目の高さまで持って来ると、魔法陣を覗き込む様に見つめる。
「こんな魔具を発明して、この男を送り込んでくる奴なんて、今の所ロキの野郎しか思いつかないが。あの司祭が死んだと思って油断した奴が吐く情報が欲しかったのか、何かを見たかったのか……それとも何の意味もないのか。ロキの野郎がやりそうなのは何か意味があると考えさせて何の意味もないって線が濃厚な気もするがな」
言い終わり指に力を入れ、グシャリと義眼を潰すと、カインはカウンターへと戻り、スツールに座る。
「キース。もうあの男を処理しちまっても構わないぞ」
「かしこまりました」とキースは答えると、お辞儀をし、義眼を付けた司祭の男の元まで歩いて行くと、死体になった司祭の足を持ち、悪魔共に破られたドアがあった場所から店外へと引き摺り出してい行った。
「あの死体どうすんだよ?」
マリアが訝し気に訊くと、カインはまるで今日の夕飯の話でもする様に説明しだす。
「適当に外に捨ててりゃ、ここのスラムの住人達が色々剥ぎ取って金にするだろうさ。勿論あの男の臓器も、どこぞの錬金術師が買い取るだろうしな。明日には髪の毛一本残ってないと思うぜ?」
「そうかよ」
義眼を付けた司祭の男の死体の行く末にカインの説明で納得したのか、マリアは面白くもなさそうに、フンと鼻を鳴らして酒を一口飲む。
「それで俺達が何者なのかだったか? スラムの酒場のマスターに、音楽好き幼女、んでもって、俺はそこに入り浸ってる客……」
「まさかそれが答えだとかは言わねぇよな?」
不機嫌な笑みで、弾を詰め直したフリントロック式の銃を抜いてくるマリアに、酒が入ったグラスを片手に、軽く両手を広げて肩を竦めながら、カインは冗談が通じなくて残念そうな表情をする。
「もっと俺との会話を楽しむ気はないのかよ?」
「ねぇよ……まったく、ふざけた野郎だ。つい引き金を引きたくなっちまう」
「わかった、わかった。だからそんな物騒な物はしまえよ」
マリアは溜息を一つ吐くと、銃を革の短パンと下腹辺りにバレルを挟む。
それを確認するとカインはマリアの方は見ず、真っ直ぐ前を向いて酒を一口飲んでから喋り出した。
「ノースオブエデンは表向きは酒場だ。だがマリアが言った様な合言葉を言うと、もう一つの裏の顔を見せる。この国ミズガルズの問題や、個人的に困ってる人間がウチに来て悩みや何か解決したい問題を持って来て、それを解決したり始末するのが主な仕事だな」
「ほう、つまりは掃除屋って訳か? しかも、このミズガルズ王国の暗部も範囲内……ってことは女王フレイヤも噛んでるのか?」
「掃除屋ってよりは始末屋だと俺等は言ってるんだが、まぁ、それで間違いって訳でもないな。女王フレイヤに関しては想像に任せるがな」
「酒場は情報収集にはもってこいってことか……はん。続けろよ」
少しずつ謎が明らかになっていき、マリアは酒を飲みながら目で続けろよと促してくる。
「この国の色んな機関や情報屋、又は他の国のそういった奴等にも、ここの存在を流す様にさせ、特にウチ等向けの問題はこの店に導く様にさせてある」
「ヴァンパイアの花嫁であるアタシの存在も、アンタ等の情報網に引っ掛かったって訳だ?」
「あー……まぁ、そうとも言えるか? 元々はアンタのことはアルビダからの依頼でな、彼女からアンタのことは聞かされてたんだ。だからアンタがいつ来てもいい様に、アンタの情報はこっちでも逐一調べてた」
「つまりお前はアタシの、とんだストーカー野郎って訳か?」
酒がいい具合に回ってきたからなのか、ご機嫌な調子のマリアが、意地悪気に笑みを浮かべながらカインの方を見る。
「確かに。ストーカー並みにアンタのことは知ってるかもな」
互いの言葉を聞き、酒を片手に互いに馬鹿話を聞いた時の様に笑い出す。それを何処か心地良いとマリアは感じていた。
ひとしきり互いに笑った後、沈黙が訪れる。そこにシャロンのチェンバロの優しい音色がこの店を支配する。
沈黙を先に破ったのはマリアだった。その瞳と言葉は、先程のふざけた調子が嘘だったかの様に真摯だ。
「なぁ、アンタ? なんでアンタはアタシのことを、その……あんなに肯定してくれたんだ? アレは可哀想な依頼人に同情して言ったのか?」
男勝りで強気な態度をとるマリアが、カウンターの奥の更に遠く、虚空を見つめ、エルフの特徴である長く尖った耳を少し下げながらカインに訊く。その瞳はどこか恐怖に揺れていた。
「別に、ただ事実を言っただけさ」
「仕事の範囲でもないと?」
酒を煽った後、首を傾けて眉を上げると、片方の口の端を軽く上げて笑みをつくる。
そして、おどけた雰囲気でカインは答えた。
「仕事を成功させる為に、女を口説く気はないね」
「はっ……そうかよ」
答えを聞いたマリアは酒を一気に煽ると、さっきまでの怯えた雰囲気から一転し、強気な雰囲気に戻す。
先程まで下がっていた長く尖った耳をピクピクと微かに上下させる。
普段の強気な自分に戻したつもりだろうが、耳がかわいく嬉しがっていた。
今回の話を楽しんで頂けていたら幸いです♪前に書き溜めの事や色々リアルのこと等調整し、修正作業など考えると、この次の投稿は一週間に一回ペースか、一週間の内になるべく早く投稿できればみたいな事を言ったと思いますが、引き続きそんな感じです!!
これからもどうかよろしくお願いします!!
(`・ω・´)ゞ