その男は不敵に踊る
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カインの挑発に義眼を付けた司祭の男は苛立ち、憤慨するが、泰然と自分にゆっくりと歩みを進めてくるカインに義眼を付けた司祭の男は身体中に鳥肌が立ち、寒さを覚えた。
ふざけた雰囲気で愉快気に嗤うカインの三白眼ぎみの紫苑色の瞳は危険をはらみ、身体に羽織った暗く紅いコートは、自身の未来の返り血で濡れているのではないかと錯覚させるほどの気迫を纏っている。
本能が告げてくる。
逃げろ。と……。
だが、義眼を付けた司祭の男は無理やり恐怖に立ち向かい、まるで凍えてしまい上手く回らない唇で必死に呪文を唱え始めた。
それが合図になったのか、残ったアンクー達がカインに向かい一斉に攻撃を仕掛けてくる。
「自分が歪むまで、自己嫌悪できるってことは、それだけ綺麗な心を持ってたんだろうさ。自分が悪い訳じゃないと頭では理解していても、心までそうするのは難しいからな」
喋りながらカインは、真っ直ぐ自身に突っ込んでくる一匹のアンクーの顎を剣の柄頭で跳ね上げさせる。
アンクーの顔は衝撃で天井を見る。そしてアンクーが次に見たのは自身に迫る鋭く光るガラスの刃だった。
カインは柄頭を上に上げたことにより、剣の切っ先が斜め後ろへと下がると、その距離を利用しそのまま上から袈裟斬りにする。
脆いと思われていたガラスの刀身は砕けることはなかった。
「俺が命をかける価値がある女かだって? はん、もう依頼を受けちまってるからな仕方ないだろ? まぁ、仕事抜きに、お近づきになりたい女ではあるがな。それに……この件にはロキの野郎が絡んでるだろ? アイツが絡んでるとなれば話が変わってくる」
――残り三匹。
カインの真正面から一匹のアンクーが大鎌を縦に回転させて一直線に投げてくる。
それに乗じ、残りの二匹のうち一匹は天井高く跳躍し、カインに大鎌を振り下ろそうと狙っている。
最後の一匹は投げられた大鎌の後を追い、それを盾に走り寄って来た。
「幼くして故郷の森を追われ、傷つき続けたハイエルフの幼い子が、人里でやっと見つけた幸せを奪い」
くるくる回って飛んでくる大鎌をカインは剣を握っていない左手を前に出し、大鎌の刃で腕を切断されない様見極める。
大鎌の柄が腕に当たる瞬間、鈍い衝撃を覚えたが、腕を少し後ろへ下げることで衝撃を吸収し、勢いを受け流す。
そして自身の腕を支点に柄を絡ませて風車の様に回し、大鎌の後ろから追撃してきていたアンクーの身体を縦に切り刻ませた。
「何か不幸が起きれば、マリアのせいだと囁き続け」
次に回転していた大鎌の鎌の部分で、カインの頭上から大鎌を振り下ろしてきている、もう一匹のアンクーの大鎌を弾く。
更に弾くことで腕で回転していた大鎌の勢いが増し、縦に切り刻まれていたアンクーの腹に刃が深く刺さってめり込んだ。
「マリアの優しさにつけ込み追い詰めた」
――残り二匹。
腹部に大鎌の刃がめり込むことにより、前かがみになったアンクーを踏み台にし、カインは真上へ跳ぶと上から襲って来ていたアンクーを股下から剣の刃を入れ脳天まで切り裂く。
「だが、それでもマリアは濁り切らなかった」
――残り一匹。
カインは空中で最後の一匹に向かって剣を投げつけると、勢いよくアンクーの顔面に刺さり身体ごと後ろの壁までふっ飛び、髑髏の顔を剣が貫いたことで剣の切っ先が石壁に深く刺さって貼り付けにされた。
「まぁ、おかげで、とびきり魅力的な女に育っちまったみたいだがな?」
「出会ったばかりで随分と入れ込んでいる様ですね?」
アンクー共を瞬く間に全滅させたカインに義眼を付けた司祭の男は、勝利を確信し自信満々に告げる。
義眼を付けた司祭の男はもう詠唱は終えて、後はカインに魔術を放つ隙を伺っていたのだろう。
空中なら避けられないとふんだ彼は、片手を前にかざした。
かざした掌の前に黒く輝く魔法陣を浮かべ、無数の黒い魔力で作られた鎖をカインに放つ、鎖はカインの身体にまとわりつき、床に着地したカインの身体をギリギリと締め付けだす。
「これで終わりだ小僧!」
勝った気でいる義眼を付けた司祭の男をカインは冷静に見つめながら、自身の魂を呼び覚ます。
すると魔力で作られた鎖に身体中を締め付けられていたカインの足元に、淡く紫色の光を放つ魔法陣が描かれる。
と同時に義眼を付けた司祭の男の胸に、紫色の光を放つ小さな魔法陣が浮かぶ。
直後、彼は激しい痛みが襲う胸に手をやり呻く。
カインは軽く何か握っている様な形にした右手を自身の胸元辺りまで上げ、余裕の笑みを浮かべる。
それに対して義眼を付けた司祭の男は、何かの痛みで顔を顰め大量の脂汗が滲んでいた。
今、義眼を付けた司祭の男は、まるで直接心臓を手に掴まれている様な感触と痛みに襲われている。
「いい女ってのは目が合った瞬間にわかるもんさ。さぁ、そんな、いい女をイジメたお前に審判の時間だ」
危機的な状況でも笑みを浮かべるカインは、軽く握っている様な形をさせた手を強く握りしめた。
「ガハッ!」
カインの手にドクドクと脈打つ肉を握り潰す感触が伝わった瞬間、義眼を付けた司祭の男は呻き声を上げると同時に、糸を切られたマリオネットの如く力なく床に崩れ落ちる。
カインを締め付けていた黒い魔力の鎖が消えた。
仕上げとばかりにシャロンが、ジャンっと物語の終わりを告げる様な音を、チェンバロから奏でさせ指を止める。
「ふん。結果はギルティだったみたいだな?」
カウンターまで戻り、剣を鞘に納めたカインはマリアの方を見る。
すると何やらマリアは顔をずいぶんと上気させ、信じられないものを見る様な顔で、カインを見ていた。
「どうしたマリア? 茹蛸みたいになってんぞ?」
声を掛けられたマリアは荒い口調でカインに怒鳴る。
「ウルセェよ! テメェは闘ってる最中に、なにアタシを口説いてきてんだよ!」
「いい女が酒場に一人で居るんだ。口説かねぇと失礼だろ?」
続くカインの言葉で更に顔を上気させ、プルプルと肩を震わせるマリアは、必死にいつもの強気な姿勢を保とうとしている。
「テ、テテテテテ、テメェは、な、何、口走ってたのかわかってんのか!?」
「ん? 本当のことだな?」
「あ、会った、ばかりのくせにアタシの、こ、こ、ことを、知った風に語りやがって!」
「全問正解で、テストなら満点だろ?」
「はぁ!? あ、あ、あ、合ってねぇよ! このタコ!」
傍から見ていると、どう見ても悪ぶっているマリアが、照れ隠しにカインに怒鳴っている様にしか見えなかった。
そんな彼女だったが、とうとう恥ずかしさがピークに達した。
どうしていいかわからなくなったマリアは、革の短パンと臍当たりの身体との間に挟んでいた銃を抜き、カインに銃口を向ける。
「今すぐそのふざけた口を閉じねぇと、どたまブチ抜くぞ!」
今までに感じたことのない自身の感情に混乱して、震えている指を、引き金に掛けるマリア。
銃口を向けられたカインは、両手を上げながら降参のポーズをとる。そして、おどけた口調で言う。
「おーおー、怖い怖い。弾が入ってないことも忘れるほど、頭に血が上るとは思わなかったよ」
カインの言葉にマリアが更に顔を朱くさせたのは言うまでもないだろう。
小説家になろうで読んでもらうのはなかなか難しいですが、一人でも読んでくださる方が居る限り頑張って書こうと思っています!!
次の投稿は、書き溜めと相談してって感じです。まだ描き溜めはあるのですが、長い目で見ると……って感じでして。
(;'∀')
見直しや修正作業などを考えると、最低でも一週間に一回は投稿しようと考えています。
(`・ω・´)ゞ