レクイエムに鼻歌を、悪夢に斬撃を
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不死の森近く。
二夜の月が夜空に輝く廃村。
ミズガルズ王国聖騎士団特務隊の聖騎士三名は、敵の姿の異常さに混乱していた。
騎乗した聖騎士達を囲む様に群がって襲って来る、老若男女を問わない村人達の姿形は、人の姿はしているものの、眼球は黒く濁り、虹彩は闇夜で赤い光りを放ち、瞳孔は大きくひらいている。
鍬や鋤、時には素手で襲い掛かって来る異常な村人達を、聖騎士達が剣で返り討ちにしていく。
聖騎士剣の聖なる加護を得た剣撃により村人が負った斬り傷がジュウジュウと音を立てて煙を上げながら焼ける。
だが負傷し、一度は地面に倒れる村人達だが、まるでその傷や損傷を意に介した様子を見せることなく、地面から起き上がると、再び闇夜に赤い目を光らせながら、鍬や鋤等の農具を手に襲い掛かってくる。
不死者の怪物――グールの様に厄介だが、相手の武器は農具で、動きは素人の一般人そのものだった。
数の暴力は厳しくともミズガルズ王国聖騎士団特務隊のエリート聖騎士ならば、問題はないはずだった。
「傷口が焼けてるわ! こいつ等アンデットと同類よ! ちょっ何!? いやっ!」
「化け物共が! 俺の聖騎士剣を手が焼けるのも気にせず掴みやがった! クソッ! 離せ! グッ!」
「くぅっ! 厄介な奴等だな……馬から引きずり降ろされるとは……おい、お前等! 相手に死角を突かせるな! ちゃんと互いの背中を守り合え!」
村人達は人間やグールよりも遥かに強い力があるのか、聖騎士の乗る馬の顔を手で握り潰し、苦しんで絶命する馬から聖騎士を振り落とさせたり、剣を素手で掴み焼ける自らの手をも気にせずに聖騎士を馬から引きずり降ろす。
そして三人の内、最後に騎乗していた聖騎士も、村人達の数にものをいわせた手の群れに掴まり、馬から無理矢理引きずり降ろされてしまうのだった。
「皆、大丈夫!? アンデットなら首を刎ねて数を減らすわよ!」
「任せな! と言いたい所だが、次から次へと邪魔をしやがって!」
「間が欲しいな……こう数が多くては、思い切った剣が振り難い!」
地面に転がった聖騎士達三名は素早く身体を起こし、仲間と声をかけ合いながら連携を図ると、自分達に次々と迫りくる村人達の攻撃をカバーし合い受け止め、首を刎ねようと試みるが、数が多く人自体が邪魔で相手の身体や頭を斬り付る反撃に留まってしまう。
しかも村人達は力が異常に強いうえ、筋肉も発達しているのか、見た目よりも身体を覆う筋肉が硬く、なかなか深く斬ることができない。
アンデットモンスターに有効な首の切断は、この村人達相手では威力がのりきらなければ硬い筋肉に刃が阻まれてしまい、首に上手く刃が通らないでいた。
仲間のチャンスを作る為と牽制も兼ね、身体を斬り付けたり腹や首を突き刺したりもしたが、ある程度の傷を付け聖騎士の剣で傷口を焼くことはできるものの、見る限り深く有効なダメージを与えているとは言い難かった。
対する村人達は、やはり自身が負った傷を気にした様子も見せずに、倒れては起き、再び聖騎士達に向かっていくという行動を繰り返してくる。
聖騎士達は誰一人迫りくる村人達を倒せない状況に焦り出す。
「このままじゃまずいわ! キャサリン副隊長とはぐれてしまってるのよ! こいつ等に一人で挑むのは危険だわ!」
「ちっ! こいつ等がもうちょい少なきゃ首ぐらい刎ねれる間ができるんだがな!」
「動きは素人なんだ! 慎重に動けば問題無く捌ける! 焦るな!」
最後に壮年の聖騎士が二人に注意を呼びかけた時、一人の中年の男の村人が、女聖騎士に向かって鎌を振り下ろしてきた。
それを女聖騎士は冷静に聖騎士剣の腹で鎌の柄を受け止める。
だが、その中年の男の村人は、あまりにも人間離れした強い力で、鎌を押し込んでくる。
力負けしている女聖騎士の聖騎士剣が、彼女の顔に段々と近付いてくると、女聖騎士は何とか押し返そうと力を増させた時、中年の男の村人は首に勢いをつけ、女聖騎士の首元に口を大きく顎が外れる程開けて噛み付こうとしてきた。
素早く剣を動かし、鎌を受け止めたまま女聖騎士は何とかそれも剣の腹で受け止める。
「な、何!? こいつ等! 牙があるわよ!」
女聖騎士が驚きながら、何とか持ちこたえようと踏ん張る中、剣に噛み付く中年の男の村人は、剣を咥え口から涎をダラダラと流す。
その中年の男の村人が口から覗かせる犬歯は、通常の人間の犬歯とは思えない程発達し、先は尖っており、牙という表現がぴったりだった。
「ハァッ! 他の奴等も牙を持ってるぞ! 隙さえあればすぐに噛もうとしてきやがる!」
危機的な状況にある女聖騎士の背で、斬撃を繰り出す気合いの声を上げた若い男の聖騎士が、村人に対する同じ特徴を大声で他の仲間に知らせる。
斬撃を放ち危険を知らせた若い男の聖騎士は、牙の生えた村人が振るう鍬や鋤等を聖騎士剣で捌き、反撃の斬撃や、突きを繰り返し、手応えを感じる攻撃を次々に放つ。
だが、命までは絶てない斬撃に倒れた村人達は、すぐに起き上がり、またグールの様に自分達に向かってくるという持久戦に精神が擦り減る。
最後の一人の壮年の聖騎士は二人の聖騎士の背を守り、自身に繰り出される攻撃の隙を突きながら、横で女聖騎士の剣に噛み付いている中年の男の村人に、素早く突きを、こめかみに放って助けた。
背中で三角を描く様な陣形で戦う聖騎士三人は皆、村人達の常軌を逸した姿と力に苦戦を強いられていた。
「くそっ! きりがないな」
そう愚痴を吐き、キャサリンは仲間の騎士達から離れた所で、自身に群がる村人を相手に、一人剣を振るっていた。
しかし、キャサリンが何度致命傷を与えても、村人は聖騎士剣でできた傷口を焼かれるだけで暫くすると立ち上がり、自分に向かって来る。
数人は首を断ち殺したが、終わりの見えないこの状況に焦り、アベルの方を窺うが、アベルはヴァイスと激しい剣撃をぶつけ合っている真っ最中だった。
それを見たキャサリンは何とか自分一人でこれを乗り切るしかないと、視線を目の前の村人に戻すのではなく、二夜の月が輝く夜の空に浮かぶスカーレットに向ける。
「おい! そこのヴァンパイア! 降りてきて私と正々堂々と一対一の勝負をしろ! 私達が貴様らより下等だと言うならば、それを証明してみせろ!」
視線は向けていないが鍬を片手に自分に迫って来る老人の首を一刀で刎ねると、キャサリンはこの狂気に満ちた村人達を止めるには、スカーレットを叩くのが一番だと考え、言葉を放つ。
「安い挑発ね? お嬢ちゃん。私とヴァイスは人間を超えた存在になったのよ? お姉さまの血を分け与えられ、夜の眷属、高貴なるヴァンパイアになったの。貴方の様な下等生物の相手をする必要なんかないの」
アベルがヴァイスと激闘を繰り広げ、聖騎士団の三人は互いに助け合い連携してモンスターと化した村人達と攻防を続け、スカーレットに一対一を申し込んだキャサリンは一人で自身に群がる村人達の攻撃に、常に立ち止まらず死角に身を置き、隙さえあれば村人の首を刎ねる。
「くっ! お前達! こいつらはアンデットと同じ弱点だ! 聖なる属性に弱くグール共と同じで、首を刎ねるか頭を潰せば死ぬ! 刎ねるのが困難なら頭を狙え!」
キャサリンは常に移動を繰り返して戦っているせいで、肩で息をしながら、目では確認できない部下達の聖騎士に大声で、予想ではなく自身がした異常な村人達の倒し方を伝える。
しかし、人の首を刎ねるのはなかなかの技量と経験がいる。
しかも斬る場所が常に動くとなると格段に難易度は跳ね上がるだろう。
特務隊の聖騎士団員も戦闘中に人間の首を刎ねる技量は持ち合わせてはいるが、簡単にとは言えない。
更にモンスターと化した村人の多さをかいくぐり、筋肉が異常に発達し、硬い首を刎ねることはかなり難しい状況だった。
遠くからキャサリンの指示が聞こえた三人の聖騎士達は、キャサリンが生きていたことに安堵すると、自分達の実力と状況を瞬時に顧慮し、村人の首を刎ねるのではなく頭を破壊する攻撃へと切り替える。
そんな緊迫した状況下で、片方だけ見ると不吉と言われる二夜の月が輝き、モンスターと化した村人達が暴れ、あちらこちらで松明の火が浮かび、血の臭いが漂う夜の廃村の中を、鼻歌を歌いながら村人達に突き進んでくる一人の男がいた。
その男はワインレッドのコートを羽織り、月光に照らされ反射する、透明なガラスの刃の剣を片手で持ち、刃を肩に担ぎ、気楽に散歩でもするかの様な雰囲気で戦場と化した廃村を歩く。
「ふふふ~ん、ふ~んふ~ん」
鼻歌と男の存在に気付いた村人達が、その男――カインに向かい走って行き、奇声を上げながら鍬を振り下ろす。
「ふ~ふ~ん~ふ~ふん~」
鼻歌を止めることなく鍬を身体を使って避けたカインは、その村人に足払いをして地面にこかすと、次に迫って来ていた村人の顎を、剣の柄で跳ね上げる。
「ふふふ~ん、ふ~んふ~ん~」
顎に衝撃を与えられ脳を揺らされた村人の動きがフラつく。
フラつく村人を攻撃した後に出来る隙を突く様に、鋤を手に横から刺してくる村人を、カインは柄を跳ね上げた位置から、自身の背にあった剣の刃が縦の円を描く様に袈裟斬りにもっていく、通常の袈裟斬りより遠心力がついた刃は、鋤がカインに届くより早くその村人に振り下ろされる。
「ふふふ~~~~ん」
更に、先程足払いでこかした村人が、起き上がろうとしていた所に、カインは鼻歌のキリのいい場所と共に、その村人の頭を踵で踏み砕く。
グシャリと生々しい骨と肉が潰れる音がした。
「ふふふ~~ん」
そして顎に柄を当てられフラついていた村人の顔目掛けて突きを放ち、フラついていた村人の後頭部から刃を生やさせる。
村人の顔から剣を引き抜くと先程袈裟斬りにし、上半身と下半身が斜めに別れたまま地面で蠢く村人の顔目掛けて、突きを放ち止めを刺す。
「ふ~ふ~~ん」
村人達へのレクイエムなのか、ただの処理をする片手間に歌う鼻歌なのかは定かではないが、気楽に鼻歌を歌い続けながら、あっと言う間に圧倒的な強さを見せたカインに、普通ならば怯えて人は動けなくなるはずなのだが。
それでも村人達はカインへと向かい、群がろうと迫る。
「ふ~ふ~~ん」
カインにとってモンスター並みの筋力を持ち、牙で噛んでこようとする程度の、武器を持った人間など、いくら数がいようが特に気にする所などなかった。
「ふ~ふ~~ん」
カインは自身に四方八方から攻撃や、噛もうと襲ってくるモンスターに毛が生えた程度の人間の内一人を、片手で横一文字に斬り、上半身と下半身を別つ。
「ふふふ~ん、ふ~んふん~」
その横に斬った刃の勢いを殺さずに、後ろから迫って来ていた村人を、身体を低くして後ろに腰を捻って身体を回し、斜め上にある村人の首を遠心力を利用して刎ねた。
「ふ~ふ~ん~ふ~ふん~」
刎ねられた首から血が舞う中、背を見せているカインが隙だらけだと嬉々とし、鎌を振り下ろす村人を、剣を瞬時に逆手に持ち替えたカインは、自分の脇を通す様に真後ろに剣を突き、村人の腹に刃を深々と刺す。
「ふ~ふ~~~~~ん」
片手で逆手に持つ剣を又、通常の持ち方に変えながら、後ろに向き、腹を刺した村人の正面に向くと、流れる様な動作で剣を両手持ちに変え、刃が深々と刺さった腹をそのまま上へと、真っ二つに切り上げる。
「ふふふ~ん、ふ~んふん~」
カインはブシュウと音を立てて血を噴き出させる真っ二つになった村人の返り血を浴びながら、最初に上半身と下半身を別けた村人の上半身はまだ動き、生きていることを確認すると、剣を又両手で逆手に持ち替え、上から真下へと村人の顔目掛けて剣を突き刺して絶命させた。
「な、何なの!? あの男は!? たかが下等な人間一人が、私の血を、始祖のヴァンパイアの眷属になった私の血を与えた者達がやられる訳がない! そんなこと、あってはならないわ!」
狂った様に狼狽え、叫び出すスカーレット。
マリアはそれを離れた所から馬に乗りながら見ていた。
その光景は、その地獄は、雪が降る記憶の中で見た、レイがつくり出す地獄と同じだった。
「剣聖でもない、ただの人間ごときに負けるなんて……ヴァイス! 早くその剣聖を殺して、そこの赤いコートの男を殺しなさい!」
スカーレットのヒステリックなその言葉に答え様とヴァイスはするが、平然とした顔でアベルはヴァイスの剣撃を全てを打ち返す。
その中でヴァイスは感じる。
自分の剣は全てがアベルによって誘導されている様で気持ち悪いと。
今、自分がやられていることは、まるで自分に合わせて剣の稽古でもされている様だとヴァイスは焦り始める。
一方、鼻歌を歌うカインに、まるで吸い込まれる様に村人達は次々に斬殺される。
カインのおかげで村人の数が減り始め、聖騎士の三人やキャサリンが戦いやすくなった為、戦況を一気に盛り返し始めたカイン達。
カインは自分に向かって来る村人をひたすら斬殺し続けると、とうとうアベルと斬り合っているヴァイスと、夜空に浮かぶスカーレットだけになった。
「ふん。やはり真祖のヴァンパイアじゃなかったか……お前と金髪のヴァンパイアのなりそこないの二人だけになっちまったが、もうお終いか? それとも他に俺を楽しませてくれる出し物でも用意してるのか?」
二夜の月の光を浴び、返り血塗れのカインは鼻歌を止め、足元におびただしい数の村人の死体を転がらせて、スカーレットに紫苑色の鋭い目を向けながら片方の口の端をつり上げ、不敵に、そして獰猛に嗤う。
楽しんで頂けていたら幸いです♪感想、ブクマ、評価など励みになるので、どうかお願いします!!
バトルシーン好きですが難しい……
_(:3」∠)_




