眠る花嫁に銃を
ページを開いて頂けて感謝します!!ご意見、ご感想などありましたらお願いします!!
m(__)m
今年の更新はこれが最後かな?
日が昇り切った晴天の日、ドラクレシュティ公国とミズガルズ王国の国境検問所の上空に、大きなガレオン船が留まっていた。
それはミズガルズ王国の宮廷錬金術師達がロストテクノロジーを研究し、用いた技術の結晶である空飛ぶガレオン船であった。
その王族専用機、魔道飛行船≪スキーズブラズニル≫には、熟練のドワーフ達が神々すら見惚れるであろう豪華で細やかな細工と装飾を施し、船首像には黄金を彫ったワルキューレが付けられている。
魔道飛行船スキーズブラズニルが空に留まる中、陸地では国を隔てている石造りの高い塀と塀の間に設けられた木の小屋が併設してある検問所で、ミズガルズ王国の宰相と護衛の聖騎士が入国の手続きを終えた所だった。
陸路を行くミズガルズ王国の馬車や兵に混じり、馬に騎乗したアベルとキャサリン。
そしてその二人を含めたミズガルズ王国聖騎士団特務隊から選りすぐった聖騎士達五名は、停戦国であり、暗殺の任務を与えられている為か、聖騎士達は皆、緊張した表情を顔に浮かべている。
ただアベルだけは平常通りだが。
そんな聖騎士団と共に居る、黒馬に騎乗し剣の鞘を真横に向けさせ、後ろ腰に帯びさせたカインは目立つワインレッドのレザーコートを羽織り、眠たげな目で欠伸をしていた。
「相変わらず太陽は苦手みたいだね? カイン」
手綱と両足で白い毛並みを風になびかせた白馬を操り、アベルは苦笑しながらカインの黒馬の横につけた。
「……太陽は俺をいつも殺す気だ」
それを聞いたアベルは芝居がかった様に肩を竦めて返事をする。
「それじゃあ、君がヴァンパイアだよ?」
「フフ、フフフ。ご主人様は、夜の貴族です。から」
レースとフリルを施した漆黒のドレスのシャロンが、マリアが操る茶色い毛並みの馬の上から冗談を言う。
今回、マリアの護衛としてお供したいと申し出たシャロンは馬に乗れない為、マリアの前に座っている。
「夜の貴族? ほう? 大層なご身分だなカイン?」
シャロンの夜のという部分に反応し、冷たい眼差しと言葉を発するハイエルフのマリアは、普段は被っている海賊の三角帽を今は被っていない。
「何を想像したか知らないが、シャロンの冗談に遊ばれてるぞ? マリア」
棘のあるマリアの反応をみて楽し気になったカインは、アベルと今後の予定を確認しだす。
「マリア様。かわいい」
「テ、テメェ!」
マリアはからかわれたことがわかり、頬を朱色に染めて怒り、そんなマリアを可愛く感じるシャロンは、不器用にクスクスと笑いながらマリアと言葉遊びを始めだした。
「何だかあっちは楽しそうだね?」
マリア達から少し離れた場所に移動したアベルがカインにそう口にする。
「そうだな」
「彼女の不安を紛らわすのは、君じゃなくて良かったのかい?」
興味なさげに答えたカインをアベルは悪戯っぽく笑う。
「俺にはヴラドの野郎をさっさとぶっ殺して、マリアを一日でも早く呪いの刻印から解放してやる方が性に合ってんだよ。その間の護衛や精神のフォローなんかはシャロンに任せてある」
カインの理屈に納得したアベルは、柔らかい笑みを消しツェペシュ公暗殺までの手筈と不死の森への順路確認に話を戻した。
今いる国境検問所からは不死の森の廃城まで、馬をとばして数日かかる。
フレイヤは自身の乗る魔道飛行船スキーズブラズニルを飛ばせば、すぐに会場である廃城に着いてしまう為、検問所上空で、数日待機することになっている。
それはドラクレシュティ公国側の人間にもフレイヤのことを報告する時間がいる為と、カイン達が王女が着く伝令役として廃城に行くのと、結婚式の会場になる廃城の安全確認に数日かかる為である。
なので検問所上空で、魔道飛行船スキーズブラズニルは、それ等が終わるまでは待機する手はずになっている。
そしてカイン達は、その数日の時間を使ってツェペシュ公を暗殺するのだ。
暗殺騒ぎが起これば勿論結婚式も中止になり、フレイヤは国境から安全に自分の城にそのまま帰ればいいだけだ。
何の危険もない。
使者として怪しまれない道のりを決めたカインとアベル達聖騎士団は、不死の森を目指す為、馬を走らせた。
アベルとキャサリンを先頭にしカイン達は一番後ろを走る。
「マリア様。数日の間は野宿に、なるでしょう。初めてが外はロマンティックではありません。夜這いは我慢。して? ください」
「あ゛? テメェは何言ってんだよ!? 流石のアタシも初めてがそんなんじゃ嫌に決まってんだろうが! って違うわ! 何でアタシがカインの野郎を夜這いしなきゃなんねぇんだよ!?」
「私、は、ご主人様。が、相手だとは言ってません。よ?」
いきなり爆弾を投げてくるませた幼女の会話に、白くきめ細やかな肌のハイエルフのマリアは、頬から長い耳まで朱色に染めて絶句した。
このシャロンの行動は、ただの趣味でマリアをからかっている訳ではない。
マリアにとってこの作戦は、自分の人生を狂わせてきた人物との決着を意味するのだ。
カインとシャロンは、マリア自身ですら気付いていない緊張と恐怖を紛らわせ、考えさせない様にしているのである。
少しでも考える時間を与えれば、マリアは幼い頃に刷り込まれた恐怖に負けてしまうかもしれないからだ。
普段は強気に、ツェペシュ公の使いの悪魔共を蹴散らしてきたが、今回は魔神ロキとヴラド=ツェペシュ本人なのだ。
こうして廃城までの道のりを馬で走る間、少しの間ですらできてしまえばマリアは表情を張り詰めさせてしまっていた。
そんな二人の少し離れた位置で黒馬を走らせるカインは、マリアに気付かれぬ様、様子を窺っていた。
暫く馬を走らせ休憩を挟みながらも不死の森を目指すカイン達一行。
そろそろ陽も暮れ始め、夜間の移動は視界も悪く、魔物や獣に襲われる等の危険がある為と、長時間走らせた馬の疲労と自分達の疲労をとる為にも、ここ等で野宿の準備を始めようと田舎道の林道の横に入った所で、火を起こし焚き火をして寝床と夕食の準備を始める。
「馬の負担になってしまうから、今回はテントなんかは持ってこなかったんだ。悪いね。マリアンヌさん?」
偽名を楽しそうな笑みで言ってくるアベルにマリアは鼻で笑って答える。
「そんな上等なもんなんざなくたって、火さえあれば十分だよ」
もう陽も落ち、暗くなった林道から外れた広場で、マリアは木々の葉の隙間から見える夜空の星を見上げた。
最初、カインとシャロンはともかく、マリアが付いてくることに、キャサリンが説明を求めてきたが、ノースオブエデンの新しい関係者だということと、アベルの何らかの説明でキャサリンを含む聖騎士達を納得させた。
特務隊のメンバー達も、いくらカインの連れだといっても、実力のわからないマリアと共に任務を遂行するのは流石に不安を覚えたのであろう。
カイン達は夕食をライ麦パンとオートミールで済ませ、その後すぐに聖騎士達は、あらかじめ決めてあった見張りに後を任せると、次の見張りや任務に備えて就寝する者達がほとんどだった。
そんな中、焚き火の側で金属で作られた銀色の湾曲した平たい形状のスキットルのネジ蓋を開け、丸い注ぎ口から質の悪い蒸留酒をカインは一口飲む。
それを同じ焚き火の火にあたっていたマリアがチラリと横目で見ているのに気付き、ネジ蓋を締めてからマリアに投げてやる。
「質は悪いがキツイやつだからな、眠れないならそれでも飲んで寝てろよ」
投げ渡されたスキットルをマリアは掴むとネジ蓋を開け一気に酒を煽る。
その後マリアは何も喋らず、張り詰めた顔をしながら焚き火の火を見続けていた。
隣に座るシャロンは何か喋ろうとしたが、カインに顔を横に振られて口を閉ざした。
三人は誰一人喋らずに焚き火を囲む。
そんな中、燃える木が温められ、熱により急速に加熱された枯れ木に残った水分がパチパチと破裂し、時には大きな破裂音を立てるだけだった。
静かな夜の時間が暫く過ぎると、スキットルの中のキツイ酒を全部飲み干したせいなのか、マリアが銃を片手に眠ってしまっていた。
「銃を手にしていないと眠れないんだね」
瞼を閉じたマリアの寝顔を見つめていたカインの後ろから、急に声をかけてきたのはアベルだった。
「よっぽど疲れてたんだろ? 一日中気を張ってやがったからな」
いつもの調子で軽く答えるカインの近くにアベルは座り、焚き火の火を見る。
「いつ来るかわからない使者に怯え続けた少女の結果……か」
アベルの呟きは、一層大きい焚き火の破裂音と共に、夜の闇へと消し去られた。
硬い表情で眠るマリアの寝顔を見つめながら、カインは知らず知らずの内に強く握りこぶしを握っていた。
「流石に笑えねぇな」
カインのいつもの軽い調子は消え、夜空を見上げると、木々の葉の隙間から見える少し欠けた月をみてカインはそう言った。
強く握られていた拳を開くと、指の爪が掌に食い込み赤い血が流れる。
楽しんで頂けていたら幸いです♪感想、ブクマ、評価など励みになるので、どうかお願いします!!
今年も後わずか!!皆様良いお年を♪
(`・ω・´)ゞ




