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誰が為に捧ぐ剣か  作者: 神戸 遊夜
第一章 ヴァンパイアの花嫁
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それぞれの思惑

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m(__)m

 一瞬だった。

 キャサリンの聖騎士剣とカインの食事用の金属製ナイフの刃が交わっただけ。ただそれだけで、キャサリンの今迄の鍛錬が否定された。


 しかもカインは手を抜いたのだ。キャサリンは悔しそうな表情を浮かべ、文句を言おうとしたが、それをアベルの鋭さが籠った言葉に遮られる。


「君とカインの実力差が、わからない程弱い訳じゃないだろう? 君は剣、彼は食事用の金属製のナイフ。そして君の斬撃は通用せず、彼をスツールから立たせることすらできなかった」


 目をつむり奥歯を噛み締めながら、アベルが淡々と告げる事実を聞くキャサリン。


「いいから、剣を収めて下がりなさい。君は僕の部隊に配属されたばかりだから知らないだろうが、今ここにいる特務隊全員でカインに闘いを挑んでも、彼をスツールから立たせることすら不可能なんだ。これも勉強と思って今後軽率な行動は慎みなさい」


「――はい」


 床に刺さった聖騎士剣の切っ先を引き抜くと、腰にある鞘へと納め、沈んだ表情で先程立っていた後ろへと控える。


 特務隊のメンバーは元居た配置に待機する為、店外へ出て行く。

 帰り際に特務隊の仲間から「あんまり気にしないでください」「カイン殿のことはそのうちわかりますよ」「あそこでカインさんに突きまで持って行けたことが凄いですよ」等と、様々な励ましの言葉を受けたキャサリン。


 そして最後の壮年の先輩聖騎士が残した言葉にもう一度驚愕をした。


「相手はアベル聖騎士長でも一騎打ちで必ず勝てる訳じゃない青年だ」


 先輩聖騎士が伝えてきた情報に頭が真っ白になり、そんなハズがないと感情が沸点に達してしまう。


「アベル聖騎士長様! そこの男に一騎打ちで負けたことがある等とは嘘ですよね!?」


 キャサリンの勢いをいなす様に肩を竦めるアベル。


「事実だよ。というより四戦一勝二敗一引き分けな訳だから、負け越してるね。実際、僕が勝った時なんて謀られているんじゃないかって思ったくらいだ。カインがいつもおどけた男を演じているからって見かけに騙されちゃいけないよ?」


「別に演じている訳じゃねぇんだがな? それにお前とやり合って勝った時なんて、いつもギリギリだろうが。全戦引き分けでもいいくらいだ」


 さっきまでのことが嘘の様に、怒りが籠った紫苑色の瞳はもうなかった。


「そうだったかな?」


 計算通りにいってくれたことを顔に出さない様に喋るアベル。


「はん」


 だがスカした態度をとるアベルに、カインは不機嫌そうに酒を煽り応じる。

 事実この二人の実力は拮抗している。


 カインとアベルの剣士としての強さや実力は、この世界の超越した者達の一人として数えられている。


「それでカイン。僕が今日、此処に来た理由は話したよ? もうわかってるよね? わざわざ招待状をフレイヤ女王陛下に出したのは、君の元に花嫁がいたんじゃツェペシュ公が手を出すのが難しいからさ。更に君が居るのは休戦協定を結んでいる国だからね。迂闊な行動はできない。だからフレイヤ女王陛下に招待状を送ることで花嫁の引き渡しを促して来た。君が素直に従えば、ツェペシュ公は無事花嫁を手に入れれる。それに、自国の暗部に関わっている人間の元に、花嫁が居るとわかれば大問題だ。ツェペシュ公の花嫁を攫ったなんて言われたら……大義は向こうに付く。だからカイン。おとなしく女海賊マリアをこちらに引き渡してくれ。君が従わずに僕と戦うことも、きっとツェペシュ公の狙いの一つだ」


 アベルはもう冷めてしまって嫌な苦味を出す珈琲を飲み干した。


「ふん。それはどうだろうな? それだとフレイヤのいう暗殺が納得いかない。花嫁を手に入れられるとやっかいだから、その前にツェペシュ公を暗殺する。それは納得できる。が、こっちがツェペシュ公を殺した時に大義がないぞ? それにマリアをツェペシュ公の手に渡らせたくないなら、さっさと殺せばいい。海賊なんだから罪人として縛り首にできるだろう? それに招待状は本当にツェペシュ公本人が出したモノなのか? ドラクレシュティ公国の公爵家はいい加減代替わりをしたいハズだ。それに公爵家なら招待状に押してあった封蝋の君主の印も用意できる。家臣達も暴君にはいい加減うんざりしているとの情報も得ている。何よりヴラドには花嫁の儀に客を招く必要がないだろう? それにこれは普通の結婚式じゃない。フレイヤを招かなかったとしても国の威厳に何の関わりもない……そうなってくるとだ、コレはヴラド=ツェペシュではなくツェペシュ公爵家の人間達とフレイヤが組んで画策してるんじゃないのか? さっきお前が言ったことは表の理由だろうさ」


 グラスの中の酒を空にし、カウンターテーブルにカンっと勢いよく空のグラスを置くと、カインはキースに再びウイスキーを注がせる。

 今回は割らせずストレートで頼んだ。


「そうか……なるほど。確かに僕も疑問は幾つかチラついてはいた、君の考えに似た所に辿り着いた時もあった」


 顎に手を当て考え込むアベルにカインはニヤリと口を笑わせる。


「フレイヤは他に何か言ってなかったか?」


 カインは目をつむり記憶を探った。

 その中でも特に印象に残っているフレイヤの言ったセリフをアベルの唇は紡いだ。


「フレイヤ女王陛下は『廃城とは悪趣味ね。不死の森に魔族でもいたら大変だわ。それにツェペシュ公の花嫁の儀が失敗して異形な姿に……なんてことになったら、それこそ、まるでお伽噺ね』と話していた。それと『廃れた城内で化け物でも発見したら式はどうなるのかしらね? まぁ、我が国の騎士なら、安全に排除してくれることでしょうけどね。そんなことになったら笑えもしないわ。とんだ不幸な話になってしまう』とも……なるほど」


 二人は瞬時に理解する。


「だろうな。そうかよフレイヤ……それは笑えない不幸な事故だな。廃城で結婚式なんて、はなからおかしな話だ。フレイヤは式当日、国境を越える時、廃城に伝令を出す。そして伝令は式の場である城が、まだただの廃城のままで警備の騎士もいない、他に招かれている人が居る様子もないことに不審がる。それじゃあ警戒した聖騎士達が先に様子を見に行くことになってもおかしくない。此処でそのフレイヤのセリフを持って来る。するとどうだ? ツェペシュ公が不幸な事故に合う。ドラクレシュティ公国側――ツェペシュ公爵家の人間や家臣達にとっても、フレイヤにとってもヴラド=ツェペシュが俺達に殺されればハッピーって訳だ。マリアを殺してもツェペシュ公が強大な力を得るのを防ぐだけでツェペシュ公を消せないからな。ツェペシュ公が殺された事件の調査で出てくる不審な点なんて、ツェペシュ公爵家とフレイヤがグルならもみ消せる。調査の結果ヴラド=ツェペシュ公は魔神ロキにそそのかされ、花嫁の儀式に失敗して魔物化したとすればいい。この結果はツェペシュ公爵家、いやフレイヤにとっても理想的な結果なんだろうさ」

楽しんで頂けていたら幸いです♪感想、ブクマ、評価など励みになるので、どうかお願いします!!

m(__)m

投稿のペースは今迄通りでいきます!!

(`・ω・´)ゞ

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