母の手記より
高校3年生の娘が倒れました。
娘は今までに入退院を繰り返してきましたがそのたびに軽い記憶欠乏症と思い込みの激しいところが娘には見受けられました。
今までの医師達の診断では低カリウム血症なのでは?とのことでしたが未だ詳しく病名は特定されていません。
特に今回は嘔吐する回数が多いのでとても心配です。
思えば私が再婚した時から娘の体の調子が悪くなった気がします。
知らない人がいきなりお父さんになり一緒に生活することに相当のストレスを覚えたのではないでしょうか。
いや、その前に最初のお父さんが肺がんで死んでしまった時にも相当なショックだったに違いありません。
悔しいですが娘はお父さん子でした。
私よりも最初のお父さんとすごく仲がよかったのです。
最初のお父さんが入院するまで毎日一緒にお風呂に入っていました。
小学生になっても父と一緒に入浴っていうのはどうなのかと思いましたが割とそういう方もいらっしゃったので少し安心した覚えがあります。
娘が最初に倒れたのは最初のお父さんが他界して2か月後のことでした。
私はその時、会社で会議をしていて突然、娘が通っている小学校の担任の先生から電話があった記憶があります。
私は会社を早退しました。
医師の診断によるとその時は軽い貧血と診断されました。
念の為に病院に一泊しました。
翌日、娘は家に戻れましたが夕飯時に信じられないことを言いました。
「あれ?パパは?」
「...」
「ねえ?ママ、パパは?」
「パパは...遠いところに行きましたよ。」
「...あ!パパは死んじゃったんだよね...ママ、ごめんなさい。」
「...いいのよ。」
私は育休をいただいた後は普通の会社員としてフルタイム働いてきましたので最初のお父さんを亡くした後でも経済的には心配はありませんでした。
それとあまり言いたくありませんが保険金もおりましたし。
ただ、娘となるべく一緒にいたいのでそれを考えると父親が必要なのかなと思いました。
私が働く時間が少なくなれば当然収入も減りますから。
ちょうどその頃、私が働いている会社の取引先の方で熱心に私を誘ってくださる方がいました。
その方の苗字がちょっと気になりましたがとても優しい方で私の娘のことを話したら力になりたいとのことでした。
そこまで言われたら苗字のことなどさほど気にならなくなりました。
その方は形式上、苗字を変えるため私の家に婿養子で入ることまで考えてくれました。
しかし、その方の家は由緒ある家柄で苗字を捨てることを親戚一同から反対されました。
やむなく私はその方と結婚し苗字を変えることになりました。
しばらくして私の心配事は表面化しました。
娘がある夕飯時に名前のせいでクラスのみんなからいじめられていると話したのです。
すぐに私は保護者会を通して娘の言ったことをみなさんに話しました。
もし、そうならお子さんに言ってやめさせてほしいと。
しかし、みなさんの反応は薄くすぐに次の話題に移りました。
担任の先生にもお話ししましたがそのような様子は見受けられないとのことでした。
お宅の娘さんは思い込みが激しいところがあるのでちょっとしたことでそう捉えてしまったのでは?とその先生は言いました。
そういう状態でも娘は登校拒否などになることなく学校に通っていました。
中学校に入ると周りの人たちもそのまま小学生からの同じ顔ぶれなのでなかなかなじめないでいたようです。
それでも中学1年の後半から2年生の夏休みまでの入院以外は頑張って学校に通っていました。
そのころの私は、会社でどうしても忙しい時以外は基本的に半日勤務という形をとってもらいました。
もちろん正社員ではなくパートという勤務待遇になってしまいましたが。
なので娘といる時間が以前に比べるとだいぶ増えました。
娘との会話の中で時折、名前のせいでイジメられるようなニュアンスがありましたので私はすぐに学校へ行き担任の先生に相談しました。
その先生も特にそういう様子はないとのお話でした。
もしかしたら娘は私の再婚に反対だったのかもしれません。
本人はそういうつもりがなくても再婚が気にくわなくて深層心理の中で名前が変だという理由でイジメにあっていると私に言い私を責めている。
そういうふうに考えたこともあります。
でも、実際そうだとしてもそんなことを考えるべきではありませんでした。
私は娘の為に最善とすることを親としてしなければなりません。
私は再婚相手に娘の為に引っ越しを提案しました。
彼は快諾してくれました。
すると事態は思ったより良い方向に進んだようです。
ある日、友達が2人もできたとすごく嬉しそうに娘が言ってきました。
私は涙を流しました。
多分、娘以上に私のほうが嬉しかったのだと思います。
名前のせいでイジメられているという話も聞かなくなりました。
娘は毎日、楽しそうで朝ご飯時に今日の朝ご飯は何?とニコニコしながら聞いてきました。
どれもこれも今までにはなかったことです。
そして信じられないことに彼氏までできたのです!
娘の彼氏は優しそうな人でした。
なんとなくイメージというか人柄が今の再婚相手と重なります。
親子ですから男性の好みも重なるのでしょうか。
ある時、娘の左手の薬指に指輪らしきものを発見いたしました。
今日、娘が入院した時、彼に娘の過去を全て話しました。
娘に指輪まで贈るくらいなら親として伝える義務があったと思うからです。
彼には早々に娘のことはあきらめてもらうか、それとも娘と一緒になる覚悟を決めてもらうかその決断をしてほしかったのです。
嬉しいことに彼は覚悟を決めるとのことでした。
娘の為にはどんなことでもすると。
私は涙しました。
そして彼にありがとうと感謝の意を伝えました。
私も娘の為にはどんなことでもするつもりです。




