持ってる女
「つよしぃ、どうしたん?その女?」
「松本先輩に突き飛ばされてケガしたんだ。保健室へつれていく。」
「へえー、随分親切じゃん。」
「当たり前だろ」
剛くんの友達だろうか。ふと気がつくと他の周りからも視線を感じてなんだか恥ずかしい。
私は剛くんに肩を借りてずっこらずっこらと歩く。
私たちはほどなくして保健室へついた。
その間、剛くんは「痛い?痛かったら言ってね。」
「もう少しだから。」などと声をかけ私を気遣ってくれた。
「失礼しまーす。あれ、保健の先生いないや。じゃあ、そこに座って。」
「はい。」
剛くんは白いキャビネットケースから綿棒と赤チンと包帯とガーゼを取り出してきた。
綿棒に赤チンを染み込ませその手が私の擦りむいた膝に伸びてくる。
「ちょっと染みるけど...」
「はい、大丈夫です。」
私はなずがままに剛くんの手当てを受けた。
「よし、これで完了と。」
「ありがとうございました。」
「えと、授業でれる?」
「はい。」
「じゃあ、連れてくよ。何組?」
「A組です。」
(ああ、なんか言わなくちゃ...このまま終わってしまう。)
「あ、あの!」
「うん?」
「本当にありがとうございます、ここまでしてもらって。」
「いえいえ。」
「それで、その...お礼がしたいのでLINEかメアド教えていただけませんか?」
「...ごめん、俺スマフォ持ってないんだ。」
「あ、そうなんですか...」
「でも、ケータイなら持ってるから...あ、ちょっと待って。」
剛くんはリュックからノートを取り出し小さく破いた。
そしてケータイを見て自分のメアドを書き込んでその切れ端を私にくれた。
「はい、俺は2年D組『みたらい剛』君は?」
「あ、ごめんなさい。名も名乗らないで。私は『御燭寺処』です。」
「ごしょくじさんかあ、いい名前だね。」
「いえ、そんな。」(はじめてだ。そんなこと言ってくれる人)
「あ、チャイムなってる。いこう。」
「はい!あ、私のメアドは返信しますね。」
「うん、待ってるよ。」
そう言い、みたらい剛くんはニコっと笑った。
(やったあ!剛くんのメアドげっと!今日の私は持ってる~。)
私をA組まで剛くんは肩を貸してくれて教室のドアを開いたとき授業はもう始まっていたので教室中のみんなの注目を浴びたけど恥ずかしい気持ちよりも嬉しい気持ちのが勝っていた。