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やっぱり私から

「ちょちょっと、やめてください!」


私は背後から忍び寄ってきた根津川くんの手を払いのけた。

ここはとある神社。

いつものメンツで初詣に来ていた。

きょんちゃんカップルに市ケ瀬くん、根津川くん、冴子、そして私。

本当に去年の秋からこの6人で遊ぶことが非常に多くなった。


「ふごーふごー。いいからいいから。御燭寺ちゃん、俺と姫ハジメしようー。」


根津川くんはそう言いながら手をニギニギして女性の胸を揉む真似をして私に迫ってくる。

マジ、最悪。


「本当に触ったらセクハラで訴えますからね!」

「ケチー。」


いや、ケチってあなた。

なんで、私が悪いように言うかな。


お賽銭箱に硬貨を投げ入れパンパンと両手を叩きお祈りする。


「今年こそは御燭寺ちゃんとつきあえますように。」


隣の根津川くんの声がそう聞こえてきた。

うわ、叶えて欲しくないな、その願い。


私は友達が笑顔でいられますようにとだけお祈りした。


「じゃあ、みんなでランチでも行こうか!」


小西きょんカレくんが仕切る。


「おー。」


きょんちゃんだけが返答する。

お約束だ。

返答しないからといってみんなイヤなわけじゃない。

冴子と市ケ瀬くんは朝からずっと2人一緒にいて真剣に話している。

何を話しているのか非常に気になるところだが邪魔をするのはやめておこう。

てなことになると私は根津川くんの相手をしなければならないということになる。


私たちは神社からかなり歩いたところの蕎麦屋さんに入った。

入口に置いてあった看板『お食事処』を指さし根津川くんはさらに私を指差しニヤニヤしている。

ホント最悪。

なんでこの人は私の嫌がることを率先してやるのだろうか。


「ふごーふごー、御燭寺ちゃん何にする?」


私の向かい側に座った根津川くんは私に話しかけてきた。


「うーん、天そば温かいの。」

「じゃあ、俺も御燭寺ちゃんと同じにしよう。」

「あ、やっぱり天丼かな。」

「じゃあ、俺も天丼。」

「じゃあ、私は天そば。」

「じゃあ、俺も。」


その言い合いを私の隣に座っている冴子に呆れた顔で見られた。


「あんたら、何してんだ...」


結局、私と根津川くんは天そばにした。


「根津川くんそれだけで足りるの?」

「問題ナッシング。スリムな体型を維持したいからね。」

「そうなんだ。」

「隣に一緒にいる御燭寺ちゃんが変な目で見られたら困るでしょ。」

「そんなにいつも一緒にいないでしょ。」

「いや、これからこれから。」


なんでこの人は私に対してこんなに自信満々なのだろうか。

オタクの人ってたいがい引っ込み思案の人が多いと私は思っていたのだが根津川くんはグイグイ私に来る。


お互い天そばを食べ終えた後、みんなで一息ついてそれぞれ話し込んでいたので私も根津川くんに聞いてみた。


「本気で私と付き合いたいと思ってるの?あ、ごめん。根津川くんのこと見下しているわけではないよ?」

「ふごーふごー、思ってるよ!」


「聞いていい?」

「うん。」


「私のどこがいいのかな?」

「もろに顔が俺の好み!あとは性格もいい!バッチグー!!」


...バッチグーってなんだろう。


「でも、私は根津川くんのことはゲームが好きでHなアニメが好きってことくらいしか知らないのだけれど。」


根津川君は私の顔をぽかんと見ている。


「そんなんで私はお付き合いするとか考えられない。」

「じゃあさ、じゃあさ、試しに付き合ってダメだったらやめればいいじゃん?」


「そんなことはできません!」


私はピシャリと言った。

隣にいる冴子はウンウンと頷いている。


「じゃあ、御燭寺ちゃんはどうしたら俺のこと好きになってくれる?」

「え?...私の言うとおりにしたから好きになるってなんか違うと思うよ?」


「俺のこと好きになってよー!」

「はあ...」


「それなら自分を磨け!バカタレ!」


冴子は根津川くんに怒鳴った。


「磨いてるよー。毎日風呂入ってゴシゴシしてるよー。」

「そうじゃねえよ、バカ!」


「俺、京本より成績いいし、バカにバカって言われたくないですしお寿司。」

「くそがっ。」


「ねっ。だから御燭寺ちゃん、俺と付き合おう。」

「なんでそうなるの。私、根津川くんのこと好きではないので付き合えません!」


「付き合えば、好きになるよ!」

「...なるとは思えないんだけど。」


「大丈夫大丈夫。付き合いつつも俺、自分のこと磨くのでヒノデ。」

「...つまんないんだけど?」


「うんうん、もっと面白いことも考えるし気持ちいいこともしよ?俺と。」

「マジ、あなた、最悪です。」


今までに私は結構キツイことも言ってるのに終始、根津川くんはニヤニヤしていた。

もしかしてこの人、私をからかってる?

こういうやり取りを楽しんでるだけじゃないの?


「...根津川くん、もし私をからかってそんなことを言っているのならもうやめてください。」

「からかってなんかいないよ。俺、本気だよ!」


「じゃあ本気って証拠を見せてみろよ!」


たまらず冴子が口を挟んでくる。


「証拠?どうすればいいんだ?」

「アホか。そんなの自分で考えろ!」


「御燭寺ちゃん、はじめて見た時からキミのことが好きで好きでたまらないんだ!俺と付き合ってください!」

「お断りします!」


「なんで?」

「好きじゃないから」


「好きになってよ~。」


同じ押し問答を何回も繰り返す。

もう、うんざりしてきた。


「ネヅっち、もういい加減にしろよ。御燭寺さん、困ってるだろう。」


根津川くんの隣に座っている市ケ瀬くんも話に入ってきた。

というかネヅっち?あだ名で呼ぶほどこの2人仲がいいのか?

意外すぎる。


「この恋は羽生ゆづることはできない!」

「...つまんなすぎるぞ、それ。」


「イッチャンよぉ、そういう自分はどうなんだい?そのゴリラ女とうまくいってるのかよぉ?」

「ああ、順調だ。」

「...オイ、誰がゴリラ女だ。しかも順調ってなに?」


照れながら冴子は市ケ瀬くんの顔を見る。

まんざらではない様子。


「は?だって俺たち付き合うのだろう?」

「は?なんでそうなってんの?」


「...今朝から俺の知的で情熱的なアプローチにお前はうんうん頷いてくれてたじゃないか。」

「ああ、ごめん、途中から面倒くさくなって話を聞いてなかったわ。」


「...なんだと。バカかお前は。人の告白はまじめに聞けよ。」

「人のことをバカバカ言いやがって!そんな告白聞けるか!」


「ああ、すまんな。ついクセで見下した言い方をしてしまう。許してくれ。...ここを出たらまた聞いてくれないか?」

「お前の告白をか?」


「ああ。」

「うーん、どうしようかな?」


「頼む。」

「じゃあ、肉うどんを奢れよ?」


「お前、まだ食うのか?」

「ああ、天丼だけじゃ足りなかったわw」


「まあ、肉うどんくらいは構わない。」

「お!さんきゅ!」


「そのかわり今度はちゃんと聞いてくれ。そしてちゃんと返事をして欲しい。」

「...じゃあ、質問。」


「なんだ?」

「なんであたしなんだ?」


先ほどの私が根津川くんにした質問を冴子は市ケ瀬くんにした。


「バカかお前は。みんながいる前でそんなことを言えるわけないだろう。」


市ケ瀬くんの顔はダルマのように真っ赤になった。

...可愛すぎる。


「はー、ほぅー?言えないんだ?みんなの前では言えないんだ?なんだ、その程度かあ。」


冴子は勝ち誇ってドヤ顔を見せた。


「むぅ...。」

「ほら?どうした?」


冴子、性格悪すぎるよ...。


「...わかった。言うよ。心して聞け。

...お前だけなんだ、本音で俺と話してくれるのは。

俺もお前とは本音で話ができる。

まったく気を使わずにな。

一緒にいると心がすごく落ち着くし和む。

とても暖かい気持ちが込み上げてくる。

たまにくるお前のパンチや締め技も俺にとってはお前と肌の接触ができる嬉しい瞬間なんだ。


たまらない。


俺にとってお前はお湯のような存在なんだ。

俺はインスタントコーヒーの粉。

俺がコーヒーカップという枠の中にひっそりと1人でいるところに京本冴子という名のお湯が注がれてくる。

俺はコーヒーカップの中で溶けてゆく。

お前が俺の心をゆっくりと溶かしていくのだ。

そして俺は満たされる。

コーヒーカップの中のコーヒーは完成されたものになる。

つまり、俺はお前という存在で完成された自分になるんだ。


ん?ちょっとバカどもには難しい話だったか?

あっといやすまん。

こういう言い方はよくなかったな。

すまん、許してくれ。


俺がお前がいいという理由はまだある。


顔も好きだ。

かなり俺の好みだと言える。

頭はバカだが賢そうに見える目じりが吊り上がったところ。

世の中ではたれ目の女子のが人気があるそうだが俺は違うな。


胸も一里塚さんには劣るが結構大きい。

推定86CMと言ったところか。

これも俺のピンポイントだ。

大きすぎず小さすぎず。

長年、俺の夢だった美乳を揉みまくるという夢を叶えてくれそうだ。

そしてスラリと伸びたカモシカのような美脚。

これもたまらない。

俺はおっぱいフェチであるとともに脚フェチでもある。

さすってさすってさすりまくりたい。


そしてそれらのパーツが組み合わさったお前の肉体は運動神経抜群。

俺は頭脳明晰。

2人の間に子供ができたならそれはもう優秀な子供に育つことはまず間違いないだろう。


つまり何が言いたいかというと京本冴子は俺にとって理想の彼女、嫁。

京本冴子!俺はお前じゃないとダメなんだ!」


市ケ瀬くんは顔を真っ赤にしながらそう言い放った。


「...なんかところどころ頭に来るところはあったけど、お、お前の気持ちはわかったよ...。」


冴子は顔をりんごのように顔を真っ赤にしながらそう言った。


「じゃあ、俺と付き合ってくれるんだな?」


「...いや、ダメだな。」

「なんでだ!」


「...あたしがお前と付き合う資格がない。」

「資格?」


「あたしにはずっと好きな人がいて...まあ、振られたんだけどさ。今でも、まだ好きなんだと思う。」

「...」


「...だからいきなり恋人とかじゃなくてこのまま友達の状態を続けてあんたがあいつのことを忘れさせてくれないか?

時間が許す限りあんたと一緒にいるからさ。」

「...」


「そして私が、あんたのことを好きになったら私からあんたに告白する。それじゃダメか?」

「わかった、それでいい。」


「ごめんね。あたしごときが学年1位の市ケ瀬様に。」

「いや、構わんよ。」


「あ、でも、あたしが告白した時にあんたがイヤになってたら断ってくれていいよ。」

「バカな。そんなハズはない。」


「あ、あとそれと1つだけお願いがある。」

「なんだ?」


「あんま、人の事『バカバカ』言うのはやめて欲しい。」

「...わかった、心の中だけで思うことにする。」


それもちょっとどうなんだ?っていう顔を冴子はしたが、すぐに笑顔に戻った。

まあ、この二人が付き合いだすのも時間の問題だろう。


私がいいなあと思って2人の様子を見ていると根津川くんが私に話し出した。


「ご、御燭寺さん、俺も、君とは本音で話ができる!」

「い、いや、もういいです!」


私が懸命に拒否っていると


「あ、あのー、申し訳ないんですが他のお客さんもいっぱい待っているんでその辺でいいですかね?」


店主だと思われるオジさんが申し訳なさそうに私たちに話しかけてきた。


「あ!ごめんなさい、すぐでますね!」


私たちはペコペコしながらお蕎麦屋さんを出た。

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