私だけじゃない
夏休みも最終日。
長いようで短かった。
こんなにいろいろあった夏休みは初めてかもしれない。
本当にいろいろあって疲れた。
剛くんへの想い、生徒会長さんに悪そうな人から助けてもらったこと,冴子が実は剛くんのことを好きだったこと。
私の気持ちもモヤモヤしっぱなし。
おっと、今日は親が両方ともいないんだった。
暗くなる前に夕食のオカズでも物色しにいきますか。
明日の学校のお弁当も作らなくちゃ。
こないだの不良にからまれたスーパーに買い物に来た。
違うところにすればいいのにとどこからか声が聞こえてきそうだがこのスーパーには私が欲しいものがすべてそろっている。
それに明るいうちに帰宅すれば大丈夫だろう。
「今日の夕飯なんだろな~。肉デース。」
などと独り言を言いながら豚肉を物色する。
コックDOから販売されている豚肉と白菜の炒めのソースは私にとって至高の1品。
「にくにくにく、に~く」
ちょっと独り言の声が大きかったようで通りすがったオバ様に聞かれたみたいで
「やあねえ、まだ若いのに。」
などと意味不明のことを言われた。
どうすりゃいいのよ。
この気持ち。
滅多に独り言なんか私は言わない。
モヤモヤが気持ちに転じてヤケクソ気味になっている。
レジに向かうとさっきの独り言を聞かれたオバサンが並んでいたのでアイスでも選んでからもう一度並ぶことにした。
ハーデンガッツの私の好きなイチゴカラメルナッツを無造作に3個カゴに入れてレジに並ぼうとしたその瞬間。
私の目の前には異常な光景が広がっていた。
5列あったレジの列が2列しかない。その2列は数メートルに渡って大渋滞を引き起こしている。
どうやらレジが3台も故障したようだ。
(ついてないな。)
私は観念してスマフォをいじりながら列に並ぶ。
「ちょっとお、早くしなさいよ。」
心無いオバ様たちから必死にレジの修復作業をしている店員に心無いお言葉が飛ぶ。
「うるさいよ。待ってるのはあんただけじゃないんだから黙って待ってろ!」
怖いオジサンの声が飛ぶ。
(こ、怖い...)
このやり取りを見たか聞いたか私の後ろに並んでいた何人かのお客さんはここでの購入をあきらめ自分のカゴから商品を元に戻すために列から離脱していた。
近隣のライバル店の策略だったら大成功という感じだった。
やっと私の会計が済むころにはとっぷりと日が暮れていた。
「はー。もうすぐ8時だよ。」
急いで帰ろうと早足にした途端に右腕を掴まれた。
「い!?」
「よう、また会ったなネーチャン。」
「きゃあああ!」
こないだの....しかも今日は1人増えて3人いる。
「お茶しようや。」
「イヤです。誰か、誰か!助けて~!」
しかし無情にも通行人は見て見ぬふり。
3人がかりで黒いバンに無理やり押し込まれそうになる。
両腕をいつのまにか掴まれてしまっているので通報も防犯ブザーも使う事ができない。
そのうちもう1人が口を押えてきた。
「ムガッ!ンンンン!」
声も出せない、まさに絶対絶命。
「おやめなさい!」
「ああ!?」
頭上から声が聞こえたので私たちは一斉に上を見上げた。
黒いバンの上に立っているおそらく女性と思われる人は黒いストッキングを頭にかぶっていた。
「その子を開放し速やかにここから立ち去りなさい!」
そんなことを言われてもその人は変態にしか見えなかった。
「なんだテメエは!テメエこそ変態じゃねえか!」
「...ならば、仕方ない。私の両腕が交差すればあなたたちは糞尿まみれになることでしょう!」
その変態さんがそう叫び両腕を交差させるとどこからともなく下水処理車がやってきて黒いバンに激突し3人の悪い人たちはその変態さんの言う通り糞尿まみれとなるのだった。
ファンファンとパトカーが近づいてくる音がする。
誰かが通報したのだろうか。
「面倒なことになりそうだから私は行くわね。」
「あ、はい。ありがとうございました。」
私はぽかんとしお礼を言うことくらいしかできなかった。
私を救ってくれた変態さんは夜の街へ消えて行った。




