はットトリック
「...ふう、このくらいでいいかな。」
大体のものを買い物かごに詰めると私はそう独り言を言った。
夏休み2週間目、ある日の夕方、私はスーパーで夕飯の買い物に来ていた。
なんでも今晩は母の同窓会があるらしくて私が父と自分の夕飯を作らなくてはならない。
料理は別に得意ではないが父が作るよりはマシなので。
スーパーを出てしばらくすると背後に人の気配を感じる。
バッと振り向くと怖そうな人が2人こっちを見ていた。
早や歩きでその場を逃げようとするとなんとその2人は追ってきた。
「よう、ねえちゃん、お茶でもしようや」
モヒカン頭の1人が私の腕をつかみそう言ってきた。
「!!きゃ~~~~!!」
私は滅茶苦茶驚いて思わず大声をあげてしまった。
しかし、通行人たちは見て見ぬふり。
「いいだろう、別にお茶くらい。なあ、つきあってくれよ。」
「い、イヤです。急いでるので手を放してください!」
「お茶くらいいいだろうが!」
私の手を掴んでるモヒカン頭の手に力が入った。
「い、痛い!放してください!誰か助けて~~~!」
「やめたまえ!」
私の前に救世主が現れた。
その人は私の学校と同じ制服を着ていた。
「なんだ、テメエは!」
「名乗るほどのものではありませんが、私はかつて赤い疾風と呼ばれたことのある男だ!」
「げえ!あの赤い疾風!って、知らねえよボケが!」
と突然モヒカンとは別のチンピラが殴りかかっていったが赤い疾風さんはさっとよけた。
「これ以上、続けるなら警察を呼ぶが?」
疾風さんがスマフォをちらつかせる。
「警察なんか怖くねえわ!呼んでみろやボケがあ!」
疾風さんはすかさず通報しすぐにファンファンファンというサイレンが聞こえる。
「げえ!こいつ本当に呼びやがった!おい、いこうぜ!」
チンピラ2人は去っていった。
この後、疾風さんは警察に事情を説明しペコリと頭を下げていた。
私はあまりの出来事にただその場に立ちすくんでいた。
「大丈夫?」
「あ、はい。」
「危なかったね。」
「はい、本当に...怖かったです。」
私はヘナヘナとその場に座り込んでしまった。
「俺は木村剛。君も学校で見たことあるから同じ生徒だよね?」
「あ、はい。私は御燭寺処です。」
「お。君が御燭寺さんか。」
「へ?私、有名なんですか?」
「うん、とても。」
「えええ~~?」
「ハハッ、いやいや、ちょっと知り合いから君のことを聞いただけだよ。」
「なんだそうだったんですか。...えっと先輩ですよね?サッカー部のキャプテンで生徒会長の?」
私の記憶だと『キムタケ』と呼ばれてて女子に超モテの...
「あ、俺のこと知ってた?」
「...うちの学校で知らない人はいないのでは。というか『赤い疾風』って呼ばれてましたっけ?」
「呼ばれてない。」
「あはは、ですよね。」
「ああいうときは自分の素性をださないほうがいい...って、まあ制服でバレてしまったかな。」
「今後、大丈夫ですかね。」
「まあ、大丈夫だろ。...念のために君は今後すぐに通報できる準備をしておいたほうがいいな。防犯ブザーは持ってるかい?」
「家にあります」
「そうか、今後は持ち歩いたほうがいい。ここから家は近いの?」
「はい。すぐです。」
「念のために遠回りして帰ろうか家の近くまで送ってくよ。」
「え?なんで遠回り?」
「さっきのやつらに家を知られたくないだろう?」
「...」
「気配がないと完全にわかるまで俺が一緒にいよう」
「...何から何まですみません」
私は『赤い疾風』さんに無事に家まで送ってもらった。
「先輩、これお礼に3個あげます。」
私はグレープフルーツを先輩に手渡した。
「お、ハットトリックだな。」
そう言うと先輩はニコッと笑った。




