世界
あ、暑い……そう思いながら半袖短パンの最低限の服装で岩地を歩き続ける。
もし、俺の身体がバターで出来てたら、溶けて死んでるぞ
とだらだらと汗を流しながら悪態をついた。
「あ~、なんで山を登ろうとしたんだろう、やめとけば良かった」
一時間前の自分を恨んで何かを言ったところでこの暑さからは逃れられないし、来た道を引き返すのも負けたような気がして嫌だ。
負けず嫌いではないが、中途半端に終わらしてしまうと靴の裏について剥がれないガムが歩く度に地面に引っ付く感触ぐらい気持ちが悪くなってしまう。だから仕方なく頂上目指して歩き続ける。
「影ってこんなに涼しいんだな」
岩地から一転、木々が生い茂る道に入り体感温度も先ほどよりも下がった。
ガサッ
うん?何かおるんかな?
音がした方に振り向くとだいたい五歩分の距離に黒い動物がいた。
犬?けど、尻尾が長いしな……それに顔も犬ではないし……
あまり野生の動物を見たことがないからわからないな……
とりあえず写真を撮っておこうとポケットからスマートフォンを出そうと目を離した瞬間、足に刺す痛みが走った。
どうやら、噛まれたらしい
乱暴に足を振り乱し追い払う。一心不乱に足を動かしてる間にその正体不明な動物は何処かに逃げたようで、姿形を見ることは出来なかった。
「もう……最悪だ」
今日はもう無理だな帰ろう。
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「まさき、帰ったんだったらただいまぐらい言いなさい!」
二階に無言であがった俺に母親が大きな声で言ってきた。
もうめんどくさいと思いながらただいまと返事をし、ベッドに座り傷を消毒しているところで意識が遠くなりそのまま眠りについた。
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ピッピッピ
と耳元でなる音で目が覚めた。
「やっと起きてくれた……このまま起きんかと思った……」
母さんが泣いていた。
「え?え?」
泣く母親を前にして混乱で言葉がうまく作れない。
「揺すっても起きないし、お医者さんに原因不明って言われるし……もう起きないかと思った」
大きな滴を目に溜めて見つめられる。
どうやら10日間寝っぱなしだったらしい。そりゃ心配になるよな……
状況も理解し周りを確認するとここが病院だと気付いた。
”今日あの子に告白するんだ!僕の卵を産んでくれってさ!“
”あの子もう別のやつの卵を産んでるぞ……“
”え……?“
突然聞こえてきた会話に驚き、周りを見渡すが卵を生むような人は周りにはいない。そもそも卵を産む人間がいるのか?
幻聴か……原因不明で寝続けたら何かしら症状もでるよな……
寝て起きたら治ると信じ、母親にごめんと謝り再び眠りについた。