橋
ナナとハチが次に橋を渡って見えてきたのは、七つの看板を全国に出している人気のレストランだった。何でも、七味唐辛子をふんだんに使った『ちらし寿司』が人気らしかった。果たして『ちらし寿司』が何なのかナナには分からなかったが、そのおいしそうな匂いは、この間の洞窟とはまた違った匂いで二人を惹きつけた。
「いらっしゃい」
レストランの入り口から店主が顔を出し、笑顔でナナに声をかけた。たっぷり口ひげを蓄えた、気前のよさそうな店主だった。
「ご注文は?」
「え? ええと……」
ナナは困った。もうレストランに払えるほどのお金を持っていなかった。
「あの……僕、要りません。……お金ないんで」
ニコニコ顔の店主に何だか申し訳なくなって、ナナは小さい声で呟いた。店主はおや、と首をかしげた。
「お金なんて要らないよ。坊やが後七回大きくなっても、’ちゃんと’おなかが減るのを約束してくれるなら、今日は何だって食べて構わないよ」
「え……おなかが減るだなんて、約束しなくても当たり前のことじゃない」
「大人になっても、そう言ってくれたら嬉しいね」
「絶対言うよ」
笑顔で頷く店主を見て、ナナは拍子抜けした。
レストランの席に着くと、ナナはおなかいっぱいになるまでたくさんの料理を食べた。そのどれもに七味をかけ過ぎていたので、味は大体同じだったが、どれも本当においしい料理だった。散々食べつくした後ナナはやっぱりこのままお金を払わないのは申し訳ないと思ったので、七日だけ住み込みで働かせてもらうことにした。
早朝、心地いい疲れを残した体でレストランに別れを告げ、ナナとハチはまた旅を始めた。




