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 ナナとハチが次に河を越えて見えてきたのは、七つの入口と七つの窓を持った、七つのサーカステントだった。テントはキラキラと七色に輝き、七つの窓からは玩具やら漫画やらお菓子やら、ナナの大好きなものがたくさん揃っていた。こんなところに住めたらどんなにすばらしいだろう、とナナはため息をついた。


「ここに住みたいのかい?」

 すると、サーカステントの中からピエロがひょっこり顔を出し、ナナに声をかけた。

「住めるんですか?」

「君には難しいだろうな」

「どうしてですか?」


 ナナはムッとなって言い返した。ナナは運動が大好きだった。サーカスとまではいかなくても、毎日訓練すれば空中ブランコだって飛び回れるようになるかもしれない。

「そうだな。君は何が欲しいんだい?」

「次に住むおうちです」

「他には?」

「えー……ええっと……。さ、サーカスに出たい、かなぁ……?」

何も考えていなかったナナはとっさにさっき考えていたことをそのまま答えた。

「そうだな。その七倍くらい自分の欲しいものが見つかったら、考えてもいいよ」


 そう言ってピエロはナナにワタアメをくれた。せっかくだから、とピエロはナナ達をテントの中に招待し、本番前のサーカスを覗かせてもらった。


「全部一人でやっているんですか?」

 テントの中は、思ったよりも’がらんどう’だった。キラキラしたミラーボールに照らされながら、人っ子一人見当たらないテントの中でナナが驚いて声をあげた。

「慣れたら大したことじゃないよ」

 一人黙々とサーカスの準備をしながら、ピエロは笑った。



 結局そのままサーカスの終わりまで、ナナ達は誰もいないカーテンの隅っこで過ごした。サーカスは、外側から見れば大盛況だった。静まり返った楽屋のハンモックに、ナナは七晩泊めてもらった。その夜、ナナはハンモックに揺られながら、ハチが八匹になった夢を見た。


 さて、出発の朝になってピエロに別れを告げる時、ピエロは化粧を落としていた。もう笑顔ではなかったけれど、その顔はどこか嬉しそうだったのでナナはホッとした。わざわざ泊めてもらって、迷惑じゃないかとも思っていたのだ。ピエロは二人が見えなくなるまで手を振ってくれた。ハチがその度に嬉しそうにワンと吠えた。


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