つづき
病に苦しむ執事な男の子は、ベッドで横になっていた。
その部屋へ、魔王な女の子がやってくる。両手にはお盆を持っている。思わず立ち上がろうとする執事を制止して、魔王はお盆を机の上に置いた。
執事が口を開く。
「魔王様が食事を持ってきてくれたんですね……。シャティはどうしました……?」
「寝込んじゃったー。死にはしない病みたいだけど、こうなってくるとちょっと深刻だねー」
「そんな、シャティまで……」
「大丈夫だよー。執事くんほどつらそうじゃないから。執事くんもちょっと良くなってきたかなー? あ、そうだ。おかゆ作ってきたのー」
「……作ってきた? 魔王様がですか?」
執事の問いに、魔王は元気いっぱいうなずいた。
「もちろん料理人のおじさんも倒れたの」
「それは……」
猛威を振るう病の恐ろしさに執事は言葉を探したが、なにも言えなかった。
視線を彷徨わせているうちに、、改めて魔王の様子が目に入る。病気なんかに負けないというようなことを当然のように言っていただけのことはあり、とても元気そうな様子だが、以前見た時とは違っている。
驚いて執事はまぶたを大きく開いた。
「着替えたん……ですね。その服は洗濯したあと干してあったはず……」
「ふふー。洗濯物はきちんと取り込んでおいたからねー。掃除もしたし、買い物も……まあある程度買いに行かなくてもいいように買いだめしてきたしー。あ、執事くんが会う予定だった魔族は延期できる話は延期して、だめな奴は私が処理しておいたからね。一週間後のコンサートとかー」
「ま、魔王様がすごく頑張ってる……。申し訳ございません。お役にたてず……」
「ふふー。魔王城に来る前はこれでも、水汲みでもなんでもほとんどひとりでやってたしー」
と、魔王は胸を張る。
「執事くんはいつも頑張ってくれてるんだから、こんな時ぐらいなんにも気にせず休んでいいよー」
「ありがとう、ございます。魔王様……」
自慢げな魔王の姿に、執事は少しだけ気分が安らいだように感じて頬を緩ませた。
こんな時ぐらい城下から元気な魔族を何人か連れてきて働かせればいいのにと思ったが、執事はなにも言わないでおいた。
なんだってできる魔王様の話。




