紙
魔王城の一室で、魔王な女の子がごろごろとしていた。腕を伸ばして両手で小さな紙を持っている。
そんなに真面目にでもなく、ぼっーっとした感じで紙に書かれた文字を読んでいる。
そんなとき、用事を頼みに行っていた執事な男の子が部屋にやってくる。彼は疑問を口にした。
「なにをしているんですか?」
「お仕事ー。頑張ってるのー」
魔王は答えた。
思わぬ答えに執事はびっくりした。魔王がちっちゃい手に持つちっちゃな紙に、いったいなにが書かれているのか不思議に思う。
「その紙には、いったいなにが……?」
「ふふーん。これはねー」
魔王はごろごろしたまま説明した。
「街のお店で売ってるものでねー。たくさん紙が混ぜられているなかから引くの。そうすると、紙には自分の将来にまつわることの答えが書かれているという」
「占いじゃないですか。ていうか、それを読むことが魔王様のお仕事なんですか?」
がっかりしながら執事は訊ねた。
魔王はうなずく。
「探し相手、探しても見つからず。待ってもなかなか来ない。って書いてあるねー」
「……ちなみにどなたを探してるんですか?」
「風の四天王が、観光旅行から帰ってこなくてー」
「また……。あのかたはいつもそうじゃないですか。なぜ許すんです?」
「それがあの子のお仕事だからね」
「え。観光旅行が?」
魔王はこっくりと。
「自然と触れ合うことで、柔軟な発想で作戦を立てることができるんだってー」
「それ、騙されてませんか」
「お土産もちゃんと買ってきてくれるしー」
「……もしかして僕が騙されかけてませんでしたか?」
「突発的に修行に出かけちゃうカロンよりは、ましかなーって」
「駄目じゃないですか四天王。水属性のかたにいたっては、滅多にいないどころか僕は会ったことすらないんですけど」
「あの子はねー。まーそのうちー」
あはは、と魔王は笑う。
それはそれとして、と執事は魔王に注意をした。
「あまり占いなんかに頼らないほうがよいと思いますよ」
信用が置けないからやめたほうがいい、と否定する執事に対し、魔王は、
「ところがどっこい、このことを批判するのは私以外にはできないのです!」
と言ってころんと立ち上がった。
とてとてと歩くと、魔王は机の引き出しからもう一枚紙を取りだした。
「じゃじゃーん。私の宝物だよー」
「それも、占いの紙……ですか?」
「うんうん。十年以上前にねー、先代の魔王が引いてきたらしいの。私がもらったんだー」
「先代の魔王様も……なんて書いてあるんですか?」
「探し相手、約二年後に見つかります、って。そして私は魔王になりましたー。いえーい」
執事はぎょっとした。
「そんな曖昧な占いで後継者探しをしたんですか!? 冗談でしょう!?」
「先代が私を選んだきっかけにもなった占いだからー、私以外には批判をできないというー……」
言いながら魔王は目をそらしていた。
占いの話。