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大事なもの
魔王城の一室で魔王な女の子が土人形を作っていた。ある程度造形ができてから、うーんと悩んでその人形を眺める。
執事な男の子は訊ねた。
「なにをしてるんですか?」
その言葉に、魔王は率直に答えた。
「国宝を作りたいのー!」
「……国宝?」
疑わしげな気持ちを隠さずに執事は聞き返した。
魔王は可愛らしくうなずく。
「世界にはいろんな国宝があるでしょー。玉虫の羽をはった工芸品とか、天守閣とか、鏡とかー」
「はい」
「私もね、なにかそれっぽいものを作っておけば、いずれ国宝になるんじゃないかと思ってー」
そんなことを言いつつ魔王は楽しげに土人形をいじっていく。それはどう見ても子供が夢中で工作遊びしているようにしか感じられないものだった。
しばらく執事はその様子を眺めていたが、自分の仕事に戻る前に、魔王に一応言っておいた。
「どんなものを作ったとしても、少なくともこの国では魔王様の一声があればたちまち国宝になりますけどね」
そんな言葉に、魔王は愕然として執事のほうを向いた。
手元が狂ったのか、土人形の腕が落ちた。
玉虫の話。




