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風のように
魔王城の一室で魔王な女の子が読書をしていた。
「きりんとか象って、なんだかのんびりしてるイメージがあるんだけどー」
魔王が執事な男の子に向かって話しかける。
執事はほほえんだ。
「たしかに温厚そうなイメージはありますね」
「でも普通の人間より足が速いらしいの」
「……そうなんですか」
「人間の存在価値っていったい」
「……走る速さでないことだけはたしかだと思いますけど。だいたい、存在価値は他者が決めるものではないです」
「そうだけどー」
「ところで、魔王様が走ったらどのくらい速いんですか? 僕でも追いつけそうな小走りなら見たことありますけど」
「ふふー。その気になればダチョウよりもチーターよりも速いよー」
「…………」
執事は沈黙した。
魔王はとても自慢げだった。
動物の走る速さの話。




