ではない
魔王城の魔王の私室で、魔王な女の子が本を読んでいる。
そこへやってきた執事な男の子は、二つ折りにされた紙を持っていた。
謎の女から、魔王様に渡して欲しいと頼まれた紙だ。女の言うことによると、執事はその女の存在を知っているらしい。だが執事には見覚えはなかった。
見覚えがなく、けれどもその存在について聞いたことがあり、平然と魔王城の内部にいてもおかしくない存在。
先代の魔王は男性だし、その似姿を見たことがあるので違う。
とすると、今までどれほど会おうと思っても会うことのなかった、最後のひとりなのでは……と、執事は紙を見ながら思う。はたしてその紙になにが書かれているのか。
魔王な少女は執事の存在に気づいて、本の文章から視線をはなし顔をあげた。
「執事くんー、どうしたのー?」
「あ、いえ」
執事は姿勢をただし、咳払いした。
二つ折りの紙を持ち上げる。
「この紙を魔王様に渡して欲しいと、知らない相手から頼まれました」
「……知らない相手?」
「まったく見たことのない女性でした。ただ、あなたは私を知っているはず、と言われて……」
「ふぅん」
魔王はそのちっちゃな手で紙を受け取った。たたまれた紙を開き、文面を眺めると表情を変える。
執事は訊ねた。
「なにが書かれているんですか。僕が会ったのは、いったいどなただったんです?」
わずかな期待や不安のこもった視線を執事は向けた。
魔王が沈むような声で言う。
「二週間ののち、地磁気は乱れ……」
ごくり、と執事は息をのむ。
魔王はひざとお腹の間に本を置き、両手で紙を握ったまま続けた。
「空は快晴……」
「え?」
執事が間の抜けた声を発した。
だが、それにも構わず魔王は続けた。
「エウシュペの町でオーロラが観測できるでしょう。占い師さんからだねー!」
魔王は明るく顔を上げた。
執事は愕然とした。
「占い師!?」
「うんー。オーロラの見物に行きたくなったんだけど、遠出すると執事くんが困るでしょー。だから近場で見れないかなと思って占いを頼んでたんだけど……えっと、どうしたのー?」
首を傾げる魔王に向かって、執事は肩を落としながら返事をした。
「いえ……。てっきり、今度こそ四天王最後のひとりに会ったのかと……」
「あははー。違うねー」
「もしかして一生会わないままとかないですよね」
「あははー」
占い師について明かされる話。




