表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/367

まさか

 魔王城の一室で魔王な女の子がコップに注がれたエナジードリンクを見て、

「元気は出そうだけど健康には悪そう。矛盾な感じがするー……」

 などと言っているのを聞き流し、執事な男の子は城内を歩いていく。

 シャティの仕事の様子を確かめてから、魔王あての荷物を取りに行くために中庭を通り過ぎる。

 石造りの通路に日の光が差し込み、壁の作りだす陰とコントラストになっていた。

 執事は歩いているはずだった。そのつもりでいた。しかし、いつの間にか足の動きは止まり、立ちつくしている。それがいつからだったかすら分からないことに執事は戦慄した。

 そして、目の前に影。

 暗がりに隠れてよくは見えないが、おそらくは小柄な女。年若く感じられるが、それが実際にどうであるかなど分からない。

 ささやくような、声。

「これを」

 言いながら、二つ折りになった紙を片手で差し出してくる。

 執事は相手をにらむ。だが女はそのことに構わず、感情の揺れもなく言葉を続けた。

「魔王様に渡して欲しい」

 魔王様。であれば、目の前の女が城内に侵入した敵ではないらしいことに、執事は内心で安堵した。それでも警戒は解けない。

 紙を受け取るべきかどうか執事が悩んでいる間に、女は決断を終えていた。彼女は執事に手渡すことを諦めて紙を床に置く。

 執事は問いかけた。

「どなたですか。名乗っていただきたい」

「……あなたは。私を知っているはず」

 淡々とした、確信的な声音。

 執事は心当たりになりそうな相手をすべて考えたが、間違いなく目の前の女に見覚えはない。あるいは見たことがないけれど、知っている相手――?

 戸惑ううちに、女は姿を消した。

 歩いてではない。

 用は済んだからというように、霞のように消えてしまった。

「いったい……」

 執事は叫んだ。

「いったい……なんなんだ!」

 どうしようもない思いとともに、執事はもしかして、という予感がした。

 まさか、今の相手こそが……。

新しい人物な話。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ