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似たもの
魔王城の一室で、魔王な女の子がもぐもぐと果物を食べていた。執事な男の子がやってくるのに気づくと、魔王はいそいそと皮を物陰に隠す。
執事がその動作と、ちらかった葉っぱや果物を見て魔王に訊ねた。
「あの……なにをしているんですか? さすがに葉っぱが散らばりすぎなような……」
魔王は嬉しそうに言った。
「人間の国にはね、芭蕉扇っていう魔法の道具があるんだってー。芭蕉の葉っぱに似た扇だから芭蕉扇って呼ばれてるらしいの」
「はあ」
「それでねー。私もそんな感じの道具を作ってみようと思ってー」
「思ってはいいんですけど」
執事は言いながら、魔王の掲げたアイテムを眺めた。
「それ、葉っぱじゃないですよね」
「うん」
「というか、それってバナナなんじゃ」
「そうだよー。バショウ科バショウ属の果物、バナナですー」
「果物に似た扇とかじゃなくて、もうそのまま果物を使ってるんですね……」
「ふふー。大丈夫、魔法の力で頑丈にしてあるから!」
「そういう問題じゃないと思います」
執事は深く深くため息をついた。
バナナってバショウだった話。




