住んでいる場所によって違う
魔王城の一室で魔王な女の子がにこにこと椅子に座り、窓の外の天気を眺めていた。
魔王の近くの机の上には先ほどまで彼女が読んでいた新聞が置かれていて、大きな見出しに『天変地異!? 太陽が北に輝く』と書かれている。
執事な男の子はそれを見てそっとため息を吐いた。この新聞はいったいどの方面へ向けて発行されているのだろう。
そして彼は魔王が見ているように窓の外を眺めた。輝く太陽を直接見ることはしなかったが。
「天変地異は起こりましたか?」
「起きてないねー」
魔王がころころと笑いながら答える。
「新聞も実際に天変地異が起きるなんて書いてないんだよ」
「そうなんですか?」
「太陽って赤道の上付近を通るでしょー? 北回帰線と南回帰線の間って言いかえてもいいけど」
「はい」
「自分が太陽の通り道よりも北にいる場合は太陽は南側を通るし、南にいる場合は太陽が北を通っているように見えるんだね。それを知らなくて驚いた相手の話が記事になってるの」
「……なるほど」
納得して執事はちらりと新聞へと視線を向けた。
「魔王様」
「なあにー?」
「この新聞、以前は赤道直下のペンギンを記事にしていた憶えがあるんですが」
「うん」
「もしかして、赤道のことばかり記事にしている新聞なんですか……?」
「…………」
太陽の位置の話。




