声
魔王城内に死を告げる魔物の叫び声が響き渡る。
作成室から遠く離れた広間の柱の影で、魔王な女の子は耳をふさいでいた。離れていてもうるさいと感じるのだから、魔物を作って魔物の間近にいるルリエラは相当つらいのだろう、と魔王は思った。
そっと視線を向けると、執事な男の子も両耳をしっかりふさぎつつ、顔をしかめて耳障りな音をこらえていた。
しばらくして大音量の叫び声がようやく終わった。
「長かったねぇ」
「そう、ですね……」
疲れ切った様子で執事が返事する。
魔王もぐったりと柱によりかかる。いつもならとがめてきそうな執事は、今は注意する余裕が無いようだった。
魔王は天井の装飾を見ながら言った。
「そういえばー、ゴリラが胸を叩いてもそれを声とは言わないよね」
「それはそうでしょう」
呆れたような視線で執事が言う。
魔王は続けた。
「でも、スズムシとかは羽をこすり合わせて音を出して、鳴き声って言われるよね。不思議ー」
「そう、ですか……」
「なんかもう返事が適当だね、執事くん」
魔王はくすくすと笑って言った。
執事が慌てた様子で謝ろうとしたが、それよりも先に魔王は歌い始めた。透き通った声が心を癒すように、静かにふたりきりの広間に響いていく。
虫の声の話。




