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その日は

 とりたてて特徴もない地方に生まれ、身近な誰もがそうしていたように学校へ入り、そして卒業した。

 王都にやってきたものの入ろうとしていた会社がなくなり途方にくれ、食堂の向かいの席で難しい顔で料理をにらみつけていた男から勧誘された。困っていたところにそんな出来事が起こるというのはどう考えても怪しい話に思えたが、自分をだます理由もない。相手からしてみれば誰かを雇わねばならないという時に困っている魔族を見かけたので、渡りに船だったらしい。

 そういう経緯で魔王城で働くことになった。なんでもかんでも魔物を作って終わらせるというのも味気ないから誰かを雇ってみよう、という魔王な女の子の気まぐれがなければ、そのような機会もなかったのだろう。

 王都の食堂で出会った男は魔王城で料理を作っているのだが、彼は料理以外にもさまざまな仕事をしぶしぶこなしていたらしい。その少し前の時期にごたごたがあって働き手が減ったからだ。魔王自身も仕事をしようとしていたようだったけれど、城の掃除や備品の買い出しといった雑多なことを魔王に任せようとしなかった料理人の判断は正しかったように思える。そして料理以外にも忙しくて手が回らない料理人の代わりに働く魔族として、雇われた。

 仕事場に不満はない。

 魔王の身の回りの世話に城の管理、それから物の買い出しや魔王城へたずねてきた客とのやりとりなど。やりがいのある生活を送っている。

 メイドのシャティは自分よりも先に城で働き始めていたはずだが、頼りがいがなく、どちらかというと後輩のような印象だった。近づくだけで怯えられてもしかして嫌われているのではないかと不安に思わないでもなかったけれど、料理人や四天王たちに対しても似たような態度なのでいらぬ心配なのだろう。親衛隊とよばれる小さな魔物たち相手には特別に怖がる様子を見せないけれど、懐いているはずの魔王にたいしては時々怯えている。

 魔王というのは国で一番えらい魔族のことで、すべての魔族から尊敬されている。誰もが暖かい気持ちでその名を呼ぶのだ。それは希望の象徴なのだ。その身近で働けるというのは光栄なことで、誰もがうらやむ仕事である。

 自分の雇い主となった就任したばかりの新しい魔王は実に奔放で、変な遊びを彼女が思いついてそれに付き合わされる時など、なにを自分はやっているのだろうと思わないでもなかったけれど、それでも尊敬する相手であることに変わりはない。

 別に誕生日や魔王城で働き始めた記念日というわけではない。

 わけではないけれど、その尊敬する魔王から気まぐれに、執事くんいつも頑張って働いてくれてるからー、とか言われてサプライズ的に手作りケーキをプレゼントされて、執事な男の子は照れた。

「ええと、その……ありがとうございます」

執事がケーキをプレゼントされた話。

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