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おいしいのを食べたい
魔王城から離れた場所で魔王な女の子が歩いていた。執事な男の子やメイドのシャティも一緒で、魔王の気まぐれで買い物に来ている途中だった。
道の途中で足を止め、魔王は見上げる。
「すごいねー。桜がきれいー」
「き、きれいですけど、そのぅ……」
外をお出かけということで遠慮したものの結局引っ張り出されたメイドの少女が、弱々しく声を出す。
「なんていうか、あ、圧倒されますね……」
「すごいもんねー」
さっきから魔王はすごいばっかり言っているようでもあったけれど。視界一面に桜の花は咲き誇っている。
そういえば、とメイドの少女が言った。
「そ、そのうち、さくらんぼも食べられるようになるんですかぁ?」
「あー。さくらんぼは観賞用の桜とは別の桜でできるやつだねー」
「そ、そうなんですかぁ」
「うんー。こういう桜にも実はついたりするけど、あんまりおいしくなかったねー」
なかった、とか過去に食べたような魔王の発言があった気もするが、執事はなにも聞かなかったことにした。
さくらんぼな話。




