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待つ

 魔王城からほど近く、何本もの木々が生える場所に魔王な女の子はお出かけに来た。執事な男の子やメイドのシャティも連れてきている。

 魔王はばっと腕を振り、手のひらで木を示す。

「こちらはカエデの木ですー。これからメイプルシロップを取るよー」

「だからバケツとか変な器具とか持ってきたんですね……」

 荷物持ちをさせられた執事が納得した。出かける前には一切まったく説明はなかったが、魔王の行うことなのでそんなものなのだろう。

 メイド服を着た少女のシャティはまじまじとカエデの木を見つめた。出かけるとき背を縮こめて魔王の後ろに隠れていたとは思えないほどの真剣さだ。

「こ、この木からメイプルシロップが取れるんですかぁ? す、すごいです……」

「正確には、採れた樹液を煮詰めて濃くしたものがメープルシロップだねー。こうやって木に穴をあけてー」

 魔王がおもむろに指を木に突き刺した。

 メイドが目を丸くする横で、執事が言った。

「ものすごく無造作に穴をあけましたね。さすが魔王様」

「それで、もってきた道具を穴に突き刺しますー。それであとはバケツを設置して、待ってるだけだねー。この道具から自然と樹液が出てくるからー」

 嬉しそうに魔王が言う。

 シャティもわくわくした様子だ。

「め、メイプルシロップができたら、あの、ほ、ホットケーキとかに使うんですか? おいしいですよね」

「あー、ホットケーキもおいしいよねー」

「ま、魔王様は、そのう、どういうことにメイプルシロップを使うつもりだったんですかぁ?」

「ふふー。グラノーラを作るのー」

「……グラノーラって、め、メイプルシロップを使ってたんですか」

 シャティが口に指先を当てて、驚いたように言う。

 魔王が言う。

「穀物にシロップとかを混ぜて焼いたのがグラノーラです。ふっふー、楽しみだねー」

 うきうきしている魔王に、執事は訊ねた。

「それで、どのくらい待つんですか?」

「…………」

「魔王様……?」

 魔王はそっと目をそらした。

グラノーラの話。

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