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 魔王城の一室で、魔王な女の子がこたつに入って寝転んだままごろごろしていた。

 夜。夕食前のことである。お布団の温かさに包まれて魔王はご満悦だ。

「うー、気持ちいいー」

 こたつの上には新聞が置かれている。先ほどまで魔王が読んでいたものだ。

 大きな見出しに書かれているのは、『恐怖! 赤道直下、常夏の島に生息するペンギンがいる!?』

 どの方面へ向けた新聞なんだろうと、執事な男の子はため息をついた。

「魔王様、そんなにごろごろとしていてはみっともないですよ」

「だってー、あったかいんだもーん」

 などと言いながら、魔王はまだまだごろごろとする。

 夕食の特製カレーが出来上がってくるまではこのままだろうと、執事はなかばあきらめつつ思った。

 ところが、ばっ、と唐突に魔王が上体を起こした。

「ど、どうしたんですか? 魔王様」

「面白い図が思い浮かんだの」

「というと……?」

「獅子は我が子を千尋の谷に落とす、というでしょー」

「実際のライオンとは違うらしいですけどね。それがどうしたんですか?」

「ペンギンは餌場が安全かどうか確かめるために仲間を海に落とすという……」

「えーと……」

「それでねー。獅子の群れが安全を確かめるために、一匹の獅子をみんなして押し出してる様子が思い浮かんだのー」

「変なこと思い浮かべずに忘れてください。そんな情けない獅子は嫌です」

「それとねー。海にもぐって餌を取れて空だって飛べる鳥もいるのに、飛べないペンギンはかわいそう……」

「きっと飛ぶ必要がないから飛べなくなったんじゃないですか? 適応ですよ。とりあえず憐れまないであげてください……」

 執事は天井を仰ぎながら、はやくカレーが出来上がるのを待ち望んだ。

ペンギンの話。

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