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魔王城の近くで魔王な女の子が木の実を食べながら、大きな蟹の魔物を見ていた。執事な男の子も傍らに控えている。
「おうおう、こいつが俺の乗り物かよ。はん、役立たずのルリエラもたまにゃあいいことするじゃねえか」
と、言ったのは四天王のひとりで、火をつかさどるカロンだ。彼の要望で騎乗用の魔物を作ることになったのだ。
魔物を作ったルリエラは、魔王の近くでにこにこと笑顔を浮かべている。しかし、カロンの言葉にひくひくと顔が引きつるのを隠せてはいなかった。
カロンの巨体が蟹の魔物の上に乗る。
「ようし、出発だ! おら!」
カロンが勢いよく前方を指さす。
それを合図にして、猛スピードで蟹の魔物は走り出した。真横へ。
「あっははははは。ばっかじゃないの! 二度と帰ってくんじゃねーわよ、ざまーみろ!」
はるか遠くに消えていったカロンを見送りながら、ルリエラが手を叩いて大笑いする。
執事がため息をついた。
「ほんと仲悪いですね、おふたり。……いいんですか? 魔王様」
カロンとルリエラの中の悪さは前々から分かっていたことだ。だが、仕事で作った魔物がこれでいいのだろうか。
問いかけた執事に、魔王は答えた。
「大丈夫だよー。あの蟹はちゃんと前にも進める種類だから。ちょっと意地悪しちゃっただけなんだよねー、ルリエラちゃん。がんばってくれてるもんねー」
「はっ、はい! もちろんです、魔王様!」
瞳をきらきらとさせながらルリエラがはきはきと答える。
魔王が笑った。
「ふふー。ルリエラちゃんにご褒美あげるねー。ちょきちょき」
「……なんでそんな指をちょきちょきして木の実の殻が割れるんですか」
執事はどうしても信じられずに言った。
小さな少女は答えた。
「だって魔王だからー」
それ以上の理由など必要ないとばかりに勝ち誇った表情を浮かべる魔王。
そんな魔王に木の実を食べさせられて、ルリエラは感動に震えていた。
かにの話。




