むりやり飛ばす
魔王城の中庭で、魔王な女の子が腰をかがめ、小鳥が小さく鳴きながら草の上をとてとて歩くのをじぃっと眺めていた。
そこへちょうど執事な男の子が通りかかると、小鳥は何度か反対方向へジャンプすると、やがて羽ばたいて城壁の外へと消えていった。
「あー……」
などと言って魔王は小鳥が飛び去るのを見送る。
執事は小鳥の消え去った方向と魔王を何度か見比べて謝罪した。
「申し訳ありません。鳥を観察していたんですね」
「うん、まあ、そうだねー」
「?」
口元に指を当てて不思議な態度をする魔王の様子に、執事は疑問を抱く。
「むかしねー、おっきい鳥さんにみんなが迷惑させられたことがあったからー。あの小鳥ももしかして、おっきく成長するのかなーって」
「そうだったんですか……。きっと僕がここで働く前の話ですよね。ちなみに、大きい鳥というのはどのくらいの大きさだったんですか?」
「このお城くらいだよ」
「えっ」
「みんなが押しつぶされそうになってたからね。迷惑だったのー」
「……ちなみにその鳥、どうなったんですか?」
「あははー。邪魔だから投げ飛ばしちゃったー」
「投げ……っ。そうですよね。魔王様ですからね」
「今考えると、食べてもよかったよね。おいしかったかもー」
「…………」
とりあえず執事は沈黙し、城の外の空を見やった。食べられなくてよかったねと小鳥に対して思いながら。
魔王様の力は強大な話。