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 魔王城の通路を、執事な男の子が背筋を伸ばして歩いていた。いたずら猫を城から追い出すために悪戦苦闘してだいぶ疲労しているのだが、その疲れを外に出さないように気を張っている。

 そのまま歩いていた執事は、聞きなれた声が聞こえた気がして足を止めた。少し引き返して、別の通路を見る。

 そこでは魔王な女の子が拳を手に当てて座り込んでいた。

「うーん……うーん……」

 などと唸っている。

 執事は魔王の、通路に直接座り込んでいる行儀の悪さにため息をついた。

「なにをしてらっしゃるんですか」

「あー、執事くんだー」

 ひらひらと魔王は手を振る。

 魔王の目の前にある部屋の扉は開かれている。その部屋を指さし、

「蜘蛛はなぜ自分の巣で糸にひっかからないのか。というと、蜘蛛の巣には縦糸と横糸があってー、粘着性のある横糸には触れていないからくっつかないという話が有名だけどー」

「なんですか、いきなり」

「我らが魔王軍には上半身が人型で下半身が蜘蛛という魔物がいるの。普通の蜘蛛と違ってとーっても粘着力の強い特別な糸を出すことができてー……そんな自分の糸に絡まって動けなくなった蜘蛛の魔物がこちら」

「え」

 執事が部屋の中をのぞき込むと、ほとんど姿が見えないほど糸に絡まった蜘蛛女がすんすんと悲しんでいた。

 執事は魔王を見る。

「なにがどうしてこうなったんですか」

「なんかね、猫に翻弄されたんだって」

「その猫ならおそらく、先ほど城の外に追い出した猫ですね」

「お仕事はやーい。ありがとー」

 にっこりと言ってから、魔王は表情を曇らせる。

「それでー、自分では糸から抜け出せないから助けてーって蜘蛛さんに頼まれちゃったんだけど。これが難題で……」

「蜘蛛が自分の巣を食べる話とか聞いた気がしますが、無理なんですか?」

「できるんならすでにやってると思うー。それにねー、しょうがないから火で糸だけ燃やそうかと思ったんだけどー」

「だけど?」

「怖いからやめてって」

「魔物っていったい……」

「どうしたらいいのかなー」

「そういえば……」

 ぽつり、と執事はつぶやく。

「執事くん、なにか思いついたー?」

「自分の部屋に引きこもってマッドな研究ばかり繰り返しているという噂の、水の四天王に頼めばいいんじゃないでしょうか。きっと便利な発明品を持ってますよ」

「……その話、誰から聞いたの?」

「ルリエラさんから」

「うーん。執事くん、からかわれてるねー」

「まあ、僕も分かってて言いましたけど」

 ふたり揃ってため息をつく。

 執事はふと思いついて言った。

「そういえば、土から魔物とか作り出しているルリエラさんなら、魔術で糸だけ分解できるんじゃないですか?」

「それだー!」

蜘蛛の話。

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