ちっちゃくおおきく
魔王城の一室で魔王な女の子が、大きなお皿と小さなお皿ののったこたつの前に立っていた。
お皿にはそれぞれの大きさにみあったクッキーの欠片がのせられている。
魔王な女の子は、むんー、となんとなくな掛け声を発して、大きくなったり小さくなったりしていた。
頼まれて飲み物を持ってきた執事な男の子が、そんな魔王を見てきょとんとした。
「……また変身の魔術を使っているんですか? なんのためだかは分かりませんけど、そんなに使用していたらまた身体が痛くなりますよ」
「うんー。そういうことにならないように、もっと練習をしておこうと思ったのー」
「意外と、そういう練習には熱心ですよね。魔王様は」
「ふふー。そんなことで遊んでないでください、みたいに言わないんだねー」
「水が流れるのをただじぃっと見ていたり、小さな魔物に混じって棒倒しをしているよりはましなので」
「…………」
魔王はなにも言わずに小さくなった。
それから大きく声を出す。
「あとねー、気になることがあるのー」
「なんですか?」
「大きいとそれなりにたくさん食べないとお腹すくでしょー。ちっちゃくなるとね、少しのクッキーでもお腹いっぱいになるの」
「はい」
「ちっちゃくなった時、大きい時に食べたはずのたくさんのクッキーはどこにいったのかなーって」
「分かるような分からないような……」
「だから大きい時と小さい時で、食べくらべたり飲みくらべたりするのー」
「やっぱり遊んでいるだけなんじゃ……あと魔王様」
「なーにー」
「変身の魔術でどうして服まで一緒に大きくなったり小さくなったりしているかのほうが不思議なんですが」
「だって魔術だもんー」
「…………」
ちっちゃくなったり大きくなったりする話。