両手
度重なる戦いによって世界は混迷を極め、熾烈な戦いに打ち勝つべく様々な武器が製造された。良質な武器を売る商会はその大規模な研究と販路によって、それらを持たない弱者を蹴散らそうとしていた。
そんな、潰れそうになっている商会のひとつ、魔王商会。
苦境に立たされた商会は、いまひとりの女の子の手によって一発逆転の賭けに出ようとしていた――。
「なにが始まったんですか、なにが」
魔王城の一室、魔王な女の子の適当なナレーションを聞いていた執事な男の子が、律儀に突っ込みを入れる。
魔王はひとつうなずくと、こたつの上に置いてあった長い剣を手に取って言った。
「というわけで、魔王商会の新商品としてツヴァイハンダーを販売しようと思うのー」
「そもそもなんなんですか、魔王商会って」
「……お店ー?」
「それは分かりますけど……まあいいです」
魔王が適当に言っていることを追及しても、無駄に労力を費やすだけだろう。
執事は魔王の持つ剣を見て言った。
「つまり、それがツヴァイハンダーという武器なんですか」
「うんー。ツヴァイは2、ハンダーは手、って意味なの。ふたつの手で持って使う両手剣ってことだねー」
「なるほど」
「両手持ちのこの剣はとっても強い威力で敵を攻撃することができるの。この前話してたショートソードよりも倍以上の長さと重さがありますー」
「たしかに大きいですね」
「刀身も長いけど手で握る柄も長いんだよー。両手で握るからねー」
「魔王様より大きいですよね、この剣」
「たぶん執事くんよりも大きいんじゃないかなー。比べてみるー?」
「いいえ。それで、売れるんですか?」
「なにがー?」
「いえ、だから。その店が実在するかどうかはともかく魔王商会とやらで売り出すんですよね、この武器」
「…………」
「…………」
「魔族は魔術を使えばそれで済むから、あんまり売れないかも」
魔王が首を傾けて言って、執事はため息をついた。
ツヴァイハンダーの話。