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宣伝

 魔王城の一室で魔王な女の子が言った。

「さて、ここで一角獣さんからのお便りでーす」

「……このタイミングでですか?」

 勇者をやっつけたことを名目にした宴の様子を見回しながら、執事な男の子がびっくりして言った。

 魔王は言葉を続ける。

「魔王様こんにちは。戦場での活躍は拝見させていただきました。前線の魔物たちにとって一生の思い出になることでしょう」

 魔王は片手に手紙を持って、もう片方の手でシャティを掴んでいる。掴まれたメイドのほうはもう諦めたのかぐらぐら揺れていた。

「ところで魔術の攻撃を使うと炎が出たり水が出たりするのは分かります。しかし、なぜ魔術で相手を治療する際に光があふれたりするのでしょうか。という質問ですー」

 魔王は答えた。

「光はまったく治療効果に関係ないけど、ただの演出ですー」

「意味ないんですか?」

 うろんげな視線で執事が言った。

 紙から顔を上げて魔王はうなずいた。

「ルリエラちゃんとかも魔物を治療してたけど、あっちは光ってなかったでしょー」

「そういえば……そうかもしれませんね」

「でもなんの前触れもなくうにょうにょっと皮膚が再生するより、神秘的な光に照らされて回復するほうが安心しないー?」

「…………」

 執事はなにも答えなかった。

 魔王はさらに紙を取りだした。

「お次はデザートバジリスクさんからのお便りですー」

「デザート?」

「砂漠って意味ー。さてこんにちはー。ついこのあいだ勇者を撃退したのにまた勇者を撃退したらしいですよねぇ。撃退されすぎてて勇者の権威が落ちそうな気がするんですけど、どうして人間はいまだに勇者をありがたがってるんですかねぇ。という質問だよー」

 魔王はさくさく答えた。

「ひとつの国だけから勇者が出てきてるわけじゃないから、魔族にしてみれば頻繁に来ててもその人間の国にしてみれば珍しく勇者を送り出した感じなのかもー。もうひとつは魔族と人間の時間感覚の違いだねー。魔族の感覚だと二十年前でもつい最近だったりするけど、人間はそうでもないみたいだしー」

 と、魔王は言った。

 それから笑顔を浮かべて、

「あとは勇者がすごい戦果を残したよって人間の国が宣伝とかしてたりもするらしいよー。ほら、象徴みたいなものだから、あんまりイメージ下がってもいけないしー。ふふー。私もなにか宣伝してみようかなー? 象徴だしー」

「人間との戦いに魔物だけでも連戦連勝しているのに、なんの宣伝をするつもりですか」

「そっかー……」

 執事の言葉を聞いて、残念そうに魔王はお便りをしまった。

この間の戦闘に関係した質問の話。

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