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やり残していること

「じゃああの異常な災害は」

 勇者の言葉に、魔王は首を傾ける。

「ただの自然災害だったんじゃないかなー。さっきも言った通り、適度に人間から物資を奪ったりするのが魔族の基本戦略だからー。人間に被害が出るようなことは比較的しないね。手に入る物資が減っちゃうもん」

「ついこのあいだ、人間の国を闇で覆えば大量の物資を持って攻めてきてくれるんじゃないかとか言ってましたけどね」

「結局やらなかったしー」

 なにやら魔王と執事が言葉を交わしている。案外物騒なことを考えてはいるらしい。

 ラウルは深く息を吐いた。

「そうか……自然災害、か。俺たち人間はただ、嫌なものがあればそれを魔族の仕業として押しつけていただけなのかもしれないな」

「おや」

 と、執事が不思議そうに声をあげた。

「魔族の言うことなんて信じられるか、みたいに疑わないんですか?」

「それはこれから、自分でたしかめるさ。お前達に聞いた話だけじゃなく、な。それでも、俺にだって分かることがひとつだけある」

 そこで、小さな女の子にしか見えない魔王が、小刻みに飛び跳ねた。

「あれだね。ふふー。にじみ出る私の誠実さとかそういうのー」

「人間に誠実さを認められて誇るのは、なにか違うと思いますけど……それで、なにが分かるんですか?」

 執事の言葉に、ラウルは認めたくはなかったものの答えた。

「今の俺では、お前たちには勝てない。お前達の言うことがもしも嘘だったとしても」

「誠実さとかまったく関係なかったみたいー」

 悲しむでもなく魔王が言う。

 地面に力なく座り込んでいたラウルは、立ち上がると膝の土を払う。

「なあ」

「なーにー?」

「人間の村から略奪するのを、やめてもらうことはできないのか」

「人間を防衛する魔物にも、維持費がかかるからー。人間の村から略奪して維持費の足しにしてるんだね。略奪をやめろっていうことなら、本格的に人間の国を攻め滅ぼすしかないかも。それに略奪をやめるメリットないしー」

「悪かったから攻め滅ぼすのはやめてくれ」

「はーい」

 魔王が気軽に返事をする。

 自分が今ここでできることは、なにもないのだと。ラウルは悟るしかなかった。だが、このまま帰ってしまっていいのか。

 しばし考えてから、告げる。

「頼みがあるんだ」

「えー?」

「一度……手合わせをしてくれないか」

戦ってみる話。

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