明るい世界
魔王城の魔王の私室で、魔王な女の子がちょっと真面目な表情をして言った。
「人間の世界を暗くしたらいいんじゃないかなって思うの」
「……なにを急に言いだすんですか」
鈍い反応を返す執事な男の子。
魔王はこたつをとんとんと指で叩く。
「たとえばお店があったりするでしょー」
「なんだかあさっての方向に話が飛んだ気がしますが」
「お店の中でこの辺に来てほしいなーって場所を照明で明るくしておくの。そうすると人間は暗いところより明るいところが好きだから、そのコーナーへ行きやすいとかなんとか」
「……つまり?」
「人間の国々を真っ暗にしちゃえば、もっと人間がこっちにやってきて戦利品も増えるんじゃないかなー」
「それで、どうやって暗くするんですか?」
「そこはほら、なにか暗くする道具をたくさん作ってー、人間の国に設置するとか」
「人間だって、急に世界中が暗くなったら調査するでしょう。絶対にばれると思いますけど……」
「えー」
「それにもしかしたら、日照不足で農作物とか駄目になるんじゃないですか。今までみたいな小競り合いじゃなくて、全面戦争の可能性も出てきますよ」
想像して、魔王は息を吐いた。
別に人間を滅ぼしたいわけじゃないのだ。
「そういうのは困るねー」
照明の話。