177/367
雲の形が
魔王城の一室で魔王な女の子が言った。
「というわけでドリアが食べたいのー」
「……すいません。なにが、というわけ、なんですか?」
執事な男の子の言葉に、魔王がきょとんとする。
「聞こえてなかったー?」
「あいにくと、前線から帰ってきたカロンさんの訓練の音でうるさいので」
魔王は軽くうなずいた。
「ずっと音が響いてるから、ちょっと遠くの原っぱまでお昼寝しに行ったのー」
「はい」
「そしたらね、白い雲がぷかぷかと浮かんでて。その形がー……」
「ドリアだったんですか?」
「ううんー」
魔王は首を横に振った。
「子ウサギに見えたのー」
「ウサギ、ですか」
「それで思ったんだよー。これって、パラ、パレ……えーっと」
「……?」
「そう、パレイドリアだなーって。雲の形が生き物とか食べ物に見えたり、池が瞳に見えたりとか、そういう錯覚なの」
「それで、言葉の連想からドリアが食べたくなったんですか」
「うんー!」
魔王は元気に答えた。
パレイドリアの話。