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手紙

「お菓子を取り返すのー! ルブルールのたっかいやつだもんー」

 ルリエラの部屋を後にした魔王な女の子は、シャティに問われてそう答えた。

 絶対に取り返してちっちゃな魔物たちとおいしく食べるのだ。

「犬の嗅覚はすごいって話もあるけど、実はゾウとかクマの嗅覚は犬の何倍もあるとかなんとか。この子たち魔物ならもっとすごい嗅覚できっと犯人を見つけられるはずなのー」

 と言って魔王は、鼻が長かったりするちっちゃな魔物数匹を手で示した。

 それに対して、メイドのシャティは言いづらそうな声を出す。

「え、ええと、あの、そのう……」

「どうしたのー?」

「な、なんのにおいを嗅がせるんですか……?」

「…………。それはー……」

 根本的な問題に触れられて、魔王はちょっと考え込んだ。

「お菓子のにおいならきっと見つけられるはずー?」

「あ、あの、もしかしてなんですけど、お、お菓子を盗んだ犯人がいるとしたら……」

「したらー?」

「お菓子、も、もう食べちゃってるんじゃないかなって」

「…………がーん」

 魔王はショックを受けた。

 だけど言われてみれば当たり前の事態な気はする。だとすれば犯人をさがしても意味がないのではないか。

 いや、お菓子が無事でもそうでなくても、犯人は捕まえなければならないけれど。

 ルブルールのお菓子が食べられないことに悲しみを感じながら、魔王は言った。

「じゃあ、シャティちゃんのにおいを探せばいいと思うのー。ホウキにはにおいがついてると思うからー」

「えっと、そのう」

「なーにー?」

「あ、あちこちお掃除しているので、どこにでも私のにおいは、その、あるんじゃないでしょうかぁ」

「…………」

 どうしよう。

 嗅覚作戦が思わぬ行き詰まりを見せる。魔王はとりあえずお菓子とかシャティやホウキ、あとはお菓子ののっていたお皿のにおいとかを探すように、漠然とした指示を魔物に与えた。

 他に犯人をさがす手がかりはないかと、魔王は歩きながら考える。メイドやちっちゃな魔物たちの残りもあとをついてくる。

「うーん、うーん」

 そうやって歩き続けて、魔王の私室までやってきた。執事な男の子がいて部屋を整理していた。魔王がやってきたのに気づいて、執事が一冊の本を手に取る。魔王が昨日読んでいた物語の本だ。

「魔王様、この本は片づけていいんですか?」

「あ、それはまだー……あっ」

 魔王はその本のタイトルを見ながら、思い出した。

 先日届けられた手紙のことを……。

嗅覚作戦が頼りにできない話。

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