ミニ
魔王城の一室で魔王城を見下ろしながら魔王な女の子が両手を腰にあてていた。
見下ろされた魔王城はとても小さく作られた魔王城だ。
執事な男の子が問いかける。
「……どうしたんですか、これ」
「今度発売される魔王城のミニチュアだよー。よくできてるでしょー。魔王城の中で魔王城を見下ろすことだってできるんだよ」
「わけ分かりませんよその文章」
「毎週パーツごとに販売されて、十二週間かけてようやく完成しますー」
「気長ですね。途中で買うのやめちゃったりしないんですか?」
「そしてなんと、同じパーツを何個も買い集めれば、自分だけの魔王城を作りだすことが可能なんだよー」
「あ、それは楽しそう」
執事が興味深そうな目つきで、パーツのつなぎ目を見る。
魔王は言った。
「そしていざというとき、魔王城を攻め滅ぼすときにはこのミニチュアで作戦を立てれば簡単に……!」
「だめじゃないですか!?」
執事が叫んだ。
「こんなものを発売して敵の手に渡ったらどうするんですか。どこの店が販売するのか分かりませんが、すぐに販売中止の連絡を……」
「大丈夫大丈夫。いまだかつてこの魔王城は攻められたことないもん」
「ですけど」
「そもそもあんまり防衛することを考えて作られてないからね、この城。先代の魔王が多少は防犯用に術をしかけてあるみたいだけど」
「そう、なんですか。術の話ははじめて聞きましたね」
「悪いことしなければ大丈夫だからー」
よしよし、と魔王はミニチュア魔王城の頭を撫でる。
「そういえば執事くん。ずっと思ってたんだけど」
「なんでしょう」
「人間のお城って、とーっても工夫して戦いやすいようにしてあるんだって。徐々に通路を狭くして敵に渋滞させたり、城壁の傾斜の角度を変えてはしごをかけにくくしたり、誘い込んで弓矢で一斉射撃したり」
「それが、なにか……?」
「でも、どう考えても、魔族による大規模な魔力攻撃には対応してると思えないの。そういう素材も使ってないし」
「…………」
「人間同士の戦いばっかり考えてるのかなぁ」
「いまだかつて魔族が人間の城を攻めたことないですからね……」
お城の話。