金属
魔王城の一室で、ぶんぶんと風を切る音がする。
魔王な女の子は笑みを浮かべながら思いっきり金属でできたバットを振り回していた。
部屋にやってきた執事な男の子がその光景を見てぎょっとする。
「あ、執事くんだー」
「魔王様」
「執事くん執事くん。これ見てー」
「部屋の中で暴れるのはやめてください」
「……はーい」
執事にとがめられて、魔王は素直に従った。
とにかく両手に持った一本のバットを見せる。
「ふふー。真・金属バットだよー!」
「しん……?」
執事は意味が分からずに声を漏らした。
魔王は胸を張って言う。
「野球とかで使われる金属バットは、中が空洞だったり合成樹脂が入ってたりするでしょー。なんとこの真・金属バットは中身も金属が詰まってるの。頑張って作ったんだよー!」
「そう、なんですか。ところでそれ、重くありませんか?」
「私にはあんまり重くないねー」
「つまり普通の魔族には重いんですね……」
「普通の金属バットよりはそうかも?」
「せっかく作ったみたいですけど、なにに使うんですか? 野球の試合をする予定が?」
「ううん。面白そうだと思ってー。それとも野球するー?」
魔王はとっても笑顔でにこにこしていた。
金属バットの話。