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穴
魔王城の魔王の私室で魔王な女の子が言った。
「こないだシャティちゃんにピーラーを買ってきてもらったのー。皮むき器ー」
「はい」
相づちを打ったのは執事の少年だ。
魔王は続ける。
「それでねー。シャティちゃんが輪っかに紐を通してたの」
「輪っか……?」
「ピーラーの横のほうにね、ちっちゃな輪っかみたいなのがあったんだよー」
「ああ、なるほど」
「シャティちゃんがピーラーに紐をつけて、これで便利ですねって嬉しそうにしてたから、ジャガイモの芽をくりぬくための穴じゃないかなーって言いづらかったの」
「言ったんですか?」
「言ったの。でも」
「でも?」
「本当は紐をつけるための穴だったりしないよね……?」
「え、さあ……?」
皮むき器の話。