雪
魔王城の一室で、魔王な女の子とメイドの少女が絵を眺めていた。
「これは昔の魔王が描いた、非実在な神様のイメージ図だねー。おどろおどろしさと神々しさがあわさっていい感じなの」
「こ、これがそうなんですかぁ。……でも、な、なんでここにあるんですか? せっかくだから神殿とかの観光地に飾っておけばいいんじゃ……」
「みんなに見せてちやほやされたい気持ちと、絵の出来を悪く言われるのが怖い気持ちがせめぎ合ってたみたいー。私は好きなんだけどねー。結局このお城に飾ってあるの」
「そ、そうなんですか……」
シャティは自分がドジしても決して被害が及ばないように、ある程度離れた位置からその価値の高そうな絵を眺めている。その後ろを、布を持った執事な男の子が通り過ぎて行った。
魔王はシャティの服をつまんで、次の絵を見ることをうながした。
「次は海の絵だねー」
「え、う、海の絵なんですか……? あ、お魚がうつってますね。ごつごつとした岩場に……雪……?」
「マリンスノーだねー」
「そ、そういう名前なんですか……雪が海に落ちてきたもの、とかですか?」
「ううん。雪に見えるからマリンスノーって呼ばれてるだけなの。実際には、微生物の死骸とか排泄物って噂だねー」
「え、ええっ。そ、そうなんですかぁ」
メイドのシャティは驚いた表情をしながら、どこか幻想的な海の絵画を見つめる。マリンスノーは海底へ向かって降っている。
魔王は言った。
「このマリンスノーは海の生き物の餌になってるんだってー。ほらほら、ここの魚さんとかー」
「お、おいしいんでしょうか」
「どうなんだろうねー」
「気になりますねぇ」
「おいしいといいねー」
マリンスノーの話。