期間限定
お菓子屋の軒先の長椅子に座って、魔王な女の子が期間限定味の出たお菓子をおいしそうに食べていた。
顔なじみの占い師と偶然出会って、彼女と一緒に食べているのだ。執事な男の子はなにもせずそばに立っていて、なぜだかあきれたような表情をしている。
魔王は言った。
「個数限定と違って、ちゃんと買えるからうれしいねー」
「人気があると、売り切れるけど」
占い師がお菓子を食べるのを中断して、言う。
魔王はこくこくうなずいた。
「そうだよねー。いっそ、こういう商品は一度魔王に献上することみたいな法律を作ればいいのかなー」
などと思ったのだが、魔王は執事の表情を見てやめることにした。
気を取り直して魔王は言う。
「通常バージョンのお菓子もおいしいけど、こういう季節にちなんだ限定味も新鮮味があっておいしいよね。なくなっちゃうのが残念なくらいなの」
「知らない」
そっけない占い師の言葉。
魔王は首を傾げた。
「んー、どういうこと?」
「私が好きなのは、限定品」
「う、うん」
「通常の味は食べてないので、知らない」
「……えー!?」
驚いている魔王の横で、占い師は顔に感情を浮かべぬまま、お菓子をまた食べ始めた。
占い師と限定品の話、後編。