起点
魔王城の訓練場に線を引いて、魔王な女の子がにこにこしていた。
「ふふー」
周囲に集まっているのは執事な男の子と、そしてたくさんの魔物たち。
「ルリエラちゃんがたくさん魔物たちを作ってくれたから、サッカーができるねー」
などと言って訓練場にサッカーコートを作り始めたのだ。ゴールネットなども魔術で作ってある。
執事な男の子が言った。
「地面、芝とかじゃないですけどいいんですか?」
「気にしなーい」
「参加したがってたルリエラさんがいませんけど」
「ちょっとお仕事がんばって疲れちゃったみたいー。ルリエラちゃんはまたこんどだねー」
「あと、四足歩行の魔物とか半数いますけど」
「あ、頭で押すからー……」
言いながら魔王はちょっと目をそらす。
こほん、と軽く咳払いすると、魔王は明るく宣言した。
「私はボランチやるねー!」
「ボランチ」
「うんー」
魔王が肯定すると、執事がやや首を傾げた。
「ええと、どんなポジションでしたっけ。フォワードとかミッドフィルダーはなんとなく分かりますけど……」
「ボランチはねー。中盤の守備的な役割で、パスして攻撃の起点にもなったりするのー」
「……魔王様はもっと、攻撃したがると思っていましたが」
「そういうイメージー?」
魔王はきょとーんとした。
それから、転がっていたサッカーボールを両手で抱きしめて告げる。
「私がドリブルしたらきっと誰も追いつけない速さになるしー、シュートしたらきっと死傷者が出るもん」
「それは……恐ろしいですね」
執事は深く息を吐いた。
ボランチな話。