あたたかさ
魔王な女の子の気まぐれによって一緒に山へ柴刈りに行った執事な男の子は、魔王城へ持ち帰った木材をとりあえず回廊のあたりに置くことにした。魔術によって薪として適切な状態にした後、使う分だけを抱えて執事は魔王が待っているはずの部屋へと向かう。
この薪を使って暖炉に火を入れるとか魔王が言っていたからだ。
執事が部屋にたどり着くと、お出かけして疲れたからなのか魔王は絨毯に寝転がって眠っていた。一緒に出掛けた執事よりも間違いなく魔王のほうが体力はあるはずだけれど。
そしてその魔王の上に、毛布代わりなのかちっちゃな魔物がたくさん覆い被さっている光景を見て、執事は言葉を失った。魔物の山に埋もれているようだった。
ふいに魔王が寝返りを打って、魔物の一匹が下敷きになる。かわいそうにと執事は思ったものの、よく見るとゴーレムだったので気にしないことにした。実際にどうなのかは知らないが、下敷きになって苦しさを感じる力はゴーレムにはなさそうだ。
魔王は穏やかな寝顔を見せている。
執事は薪を両手に持ったまま、魔王が魔物たちと温かそうに眠っているのを見て、暖炉なんて使う必要はないのではないかと思った。
柴刈りに行った話。