いいなー
魔王城の二階の部屋でお掃除をしていたメイドの女の子、シャティはぴかぴかになった部屋に嬉しい気持ちになって微笑んだ。
今日は彼女は調子が良かった。急に魔物や誰かが出てくることがなかったから、驚いて失敗したりはしていない。
ふと窓の外に視線を向けると、中庭を魔王な女の子やちっちゃな魔物たち、それと執事な男の子が歩いているところだった。
なんだかよく分からないけれどたくさんいるちっちゃな魔物たち。その魔物たちはなんだかよく分からないうちに魔王の傍にいて、魔王はその魔物たちを親衛隊と呼んでいた。シャティにはその存在の意味がちょっとよく分からなかった。
その魔物のうちの一匹、ワニっぽい魔物が魔王の頭上に乗っていて、気持ちよさそうにぐでーっとした表情をしていた。
魔王は楽しそうににこにこと歩いている。なんだかうれしそうにとことこと歩いている。
その傍を取り巻くちっちゃな魔物たちは、魔王の頭上にいる魔物を見上げながら、いいなーいいなーというような感じでうらやましそうに鳴き声を上げていた。
メイドのシャティはその光景に愛らしさを感じて微笑んでいたのだが、
「ひっ」
思わず涙目になって悲鳴をあげた。
中庭の近くにある柱の影に隠れて、四天王のひとりであるルリエラを見つけたのだ。ルリエラはぎりぎりと歯ぎしりしているような雰囲気で、魔王の頭上に乗っている魔物へ妬みの視線を向けていた。
自分が乗りたいのになんであんな魔物が、とか思っていそうだ。
実際にルリエラが乗ったらちっちゃい魔王は潰れてしまうだろうけれど。
とにかくルリエラが柱の陰に隠れて、怒りとか悔しさとかそんな負の雰囲気を振りまいている。誰にも気づかれない二階の窓からその様子を見ていたシャティは震えながら思った。
「な、ななななななな」
怖い。
嫉妬するルリエラの話。