のんびり魔王様
魔王城の一室。こたつに足をつっこんで、小さくて魔王な女の子がのんびりとしていた。
「うぅ……幸せだなぁ」
こたつの上のみかんを、両手でころころともてあそんだりしている。
そのそばにはいくつもみかんの皮がちらばっていて、何個も食べたことは明白だった。
そんな部屋に足音が響き、執事服をきた男の子がやってくる。
「おー、執事くん。おかえりー」
こたつに入ったまま、にこやかな表情を向けて魔王は歓迎した。
執事の男の子はため息をもらす。その両手にはトレイが握られていて、トレイの上にはどんぶり。そして。
「わーい、おそばだー!」
魔王はみかんを放り出してお箸をひっつかむと、こたつに置かれたどんぶりのおそばをずずずっとすすり始める。
「しょっぱいー」
口の中を空っぽにしてから、うれしそうにそんなことを言ってみたりする。
その様子を見て執事は、はぁぁっと息を吐いた。
「あのですね、魔王様。そろそろお仕事をなさいませんか」
「えー、おしごとー?」
「そうです。お仕事です!」
「……たとえば?」
意味が分からずに、魔王はかわいらしく小首をかしげる。
執事は告げた。
「魔王様の強大なお力で、人間共を恐怖のどん底に陥れるとか。せめて魔物たちを叱咤激励するとか。いろいろあるじゃないですか」
「でも、そういうの、四天王たちがやってるよー」
「そうかもしれませんが……だからってのんびりとしすぎでしょう。魔王様は今までなにをやっていましたか」
「んーとね。お花見したりー、ケーキ食べにいったりー。あ、そういえば今度はラベリオの舞台が――」
「魔王様らしいことをしてくださいよ、頼みますから」
「してるよ?」
きょとんとして、魔王は告げた。
おはしを手にしたまままっすぐに、執事の瞳を見つめている。
「執事くんにおそば作ってもらったり、こき使ってる」
「そういうことではなく!」
「えー」
「ではこうしましょう。部屋から出なくて構いませんから、どのように人間を苦しめるのか魔王様に作戦を練ってもらうというのは――」
「そういうのも四天王がやってるしー」
「四天王だけで十分じゃないですか、もう」
「というわけでおそばを食べるのー。いえーい」
「ううう。どうしたら……」
魔王城と入力しようと思ったら、魔王場と変換されました。
スキー場でスキーをするみたいに、魔王をする場所なんでしょうか。魔王のシーズン到来?