試し撃ちしました。
首に鎖の錠を付けられ、粗末な貫頭衣を着た少女が、暗闇の中こちらに駆け寄って来ている。
恐らくだが、俺達が燃やしていた焚き火の焔が遠くに居たこの子の目に入ったんだろう。
事情は詳しく分からないけど、俺は少女の前に踊り出て、その後方に追い掛けて来る狼人族の男達を見据える。
少女はもつれる足を引きずりながら、俺の背に回り、腰にしがみつく。
「お願いです……助けて……助けて……」
歳は10歳にも満たない同族の人間だ。黒い髪にオカッパ、背は俺の腰よりやや上くらいの背格好。
顔中にアザとミミズ腫れが幾重にも付いていて、正視するのもキツい。
狼人達は俺達をぐるっと輪になり囲む。
「なんだよ? ガキを追い掛けて来たら、またガキかよ。あっちのガキはくたばったからな、こりゃいい。お前奴隷決定……いっ!?」
奴の顔スレスレにレールガンを一発撃ち込む。右頬がスパッと裂け、紅い華が宙に舞い散る。
月明かりの下放つレールガンの光は、稲光を連想させ、人に抗がえぬ畏怖を与える。
俺の持つレールガンを男達の方へと向けたまま、俺は喋る。
「黙れ、動くな、目を潰れ、10秒いないにやらなければ殺す。」
「待っ!ブゲラッ………………」
二発目を胴体のど真ん中を狙い、風穴を開ける。とんでもない威力と速さ。格と言うものを感じさせる圧倒的な差。
もう、この場は俺が支配していた。
「次はどいつだ?………………黙って聞けよクズ共。お前らが今から奴隷だ。分かったらゆっくりと目を開けて武器を置いて座れ、そして、いいと言うまで動くな、喋るな、目を開けるな、……もう、大丈夫だよ。」
頭を優しくポンポンと触り、安心させてあげる。
「うぇ~~~~ん~~~」
見れば見るほど幼い子じゃないか。遅れてやって来たアイナに俺は事情を説明し、狼人に大きな首輪を作る。
その材料は、奴等の武器をアイナに吸収させ、ある程度の輪の形にしたものをレールガンの研磨力を使って作る。正直出来なんて、この際どうでもいい。
そう、四文字さえ書ければ充分だ。そして、19人全員の首輪に文字を入れて立ち去る。
「そこで一生懺悔してろ……生きたまま、ずっとモンスターに食われ続けろ……」
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【製作者】⇒マーク・エレン
【所有者】⇒マーク・エレン
【分類】⇒アクセサリー⇒首輪
【材質】⇒鋼
【防御力】⇒20
【入力文字】⇒【手足根化即再生】 7/7文字
【総合評価】⇒Aランク
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【手足根化】の四文字だけにしようと思ったが、奴等は鋼なんていい素材を持っていやがった。だから、オマケを付けてやったよ。【即再生】ってな。
永遠に苦しめ!
「他の子は?家族は……」
首を横に振る幼女。前の俺なら救えなかったろうが、今は違う。
「うっし、決めた!! 今日から俺の子な! こっちは俺の嫁のアイナ。お前の母ちゃんだ。俺は父ちゃんのエレン。アイナ!」
「はっはい!!」
「徹夜だけど街に帰るぞ。いいな。」
ポカーンとしてる二人を無視して、娘を肩車して実家に帰る。いやぁ~、父ちゃんも母ちゃんもウルトラレア素材過ぎてビックリするだろうな。
嫁と娘を連れて実家に早々と帰郷した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
エレン達がナーロウ王国にむかっている頃、ここ、カクヨーム王国のある酒場で一人の男が、噂話で盛り上がっている男達に、聞き耳を立てていた。
「それがよぉ、どうも本当みたいなんだよ。」
「おいおい、もう酔っぱらったのかよ。げはははは、短剣で校舎の壁をぶった斬るなんて出来たら、おらぁ~、このスプーンで龍を引き裂いてやるよ。」
「だから、言いたくなかったんだよ! おめぇが聞きてぇっつーから言ったのによ。」
「そのブレンだか、ジレンつー奴、今頃凄いことになってんだろ?」
「うんにゃ、なんかよ。短剣を不正呼ばわりされたからって、どっかに行ったとか聞いたぞ。まあ、ガキだし、直ぐに帰って来るだろ。」
「ちげぇねぇ!」
「「ぶはははははははは!」」
(面白い話だ。カクヨーム王国に引き抜くチャンスではないか? ナーロウ王国は工業王国として長年盤石でいたようだが、こういった奴を見逃すと痛い目を見るって事を教えてやるぜ!)
一人の男が硬貨をカウンターに置いて行くと、そのまま店を出て、街からも出る。
向かう先はナーロウ王国の方角へ向けて。