そのケンカ買います!
机の上に方腕を置き、掌を付けて人差し指でコツコツ叩くバレット・ミランダ先生。椅子に腰掛けながら俺を睨んでいる。
「君はこういう事をしないと先生は信じていたんだけどね。」
その言い方にカチンと来る俺。
「まるで不正をしたとでも言ってように聞こえるんですけど。」
俺は悪い事は何もしていない。だから、毅然とした態度で先生に返した。
「あのね、材質が只の鉄で! 文字入力がたった四文字で、しかも何か不正をしたからバケ文字がハッキリと出てて不正がバレバレ! それに短剣の攻撃力1010も出るわけないでしょが!!!」
激しく机を叩いて荒い息をして怒っている先生の気持ちは分かるが、検証もしてないのに人を嘘つき呼ばわりするのはどうなんだろう。
「そこまで言うのなら検証をして下さい。」
「検証なんて必要ありません! 開き直っているんじゃないの!」
固定観念で答えを決めてしまっているミランダ先生は聞く耳を持たない。
「先生の言ってる事は横暴です! 検証も無しに人を不正者呼ばわり! あんた教師失格だよ! この行き遅れのミランダ!」
頭に来て先生とは敢えて付けなかったし、禁句も堂々と言ってやった。見る見るうちに顔を赤く染めキレた。
「貴方は反省するどころか先生を呼び捨てにした上に、いいいい行き遅れと暴言を吐くだなんて許しません! この副理事長の私を怒らせた事を後悔しても遅いですからね! 三ヶ月間の停学処分にします! ここにマーク・エレンの不正事実を認定し、決定処分に致します!」
俺の在学カードを取り出すと、そこに三ヶ月間の謹慎処分と書き込みハンコを押す。
売られたケンカだ。しっかりと買ってやるよ! 俺は短剣を取り、ミランダの机に一閃する。
すると、ミランダの机どころか、その何台も先の机と壁も剣閃が切り裂き亀裂を作っていた。
「コレが攻撃力10の短剣かよ? コレはな俺のオリジナル言語の成果だ! あぁ! 上等だ!!!! その三ヶ月の間に良い素材を探しに旅にでてやらぁ!!!! 後からどんなに謝ろうが意地でも学園には来ねぇし、オリジナル言語も一切教えないからな!」
呆ける先生達を無視して俺は短剣を取り、家に帰った。
その日の夜のうちに理事長とミランダが家にやって来たが、俺は家族に事情を話して頑として帰って貰うように説得した。
親父は「売られたケンカだ! トコトンやっちまえ! それにエレンはオリジナル言語を開発したんだ。むしろ下手に出る必要はねぇ!」と応援までしてくれた。
俺の漢字を親父の武器にも書けたら手伝ってやるのによ……
インプリートは文字を理解し、至極当然に書けるレベルじゃないと効果がない。また、自分で槌を振るい鍛えて作った物か、天然自然の加工前の状態の物でないと出来ないのが難点だ。
そして、俺は学園がやった横暴を許さない為に、意地でも素材探しに行くと決めた。
その次の朝、俺は練習で作った装備一式に漢字をインプリートし、素材探しの為に西のブルザック鉱山へと向かった。




